横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第33回でヒリヒリするやり取りを見せた治済(生田斗真)と定信(井上祐貴)。9月14日に放送された第35回「間違凧文武二道(まちがいだこぶんぶのふたみち)」では、治済の一枚上手な怪物ぶりがまたも光った。(以下、ネタバレを含みます)
■数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く
森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く痛快エンターテイメントドラマ。
蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎の一つといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。
幕府“新時代”を目指す権力者・田沼意次役で渡辺謙、美人画が大評判となる喜多川歌麿役で染谷将太、蔦重の妻・てい役で橋本愛らが出演。語りを綾瀬はるかが務める。
■定信が将軍・家斉の隠し事に驚く
定信を老中首座の地位に就かせた治済。もともとは老中にねじ込むだけの予定だったが、定信が“首座”の地位を求めた。そのヒリヒリするやり取りは第33回の見どころだった。
そんな2人が第35回も対峙した。
蔦重が作った定信をからかうはずの黄表紙を励まされていると誤解した定信は、ますます勢いづくという、蔦重にとって皮肉な結果に。その定信は、幼くして十一代将軍となった家斉(城桧吏)が成人するまで代わりに政を執り行う“将軍補佐”ともなったが、驚きの報告を受ける。自分が知らないうちに、家斉が大奥の女中との間に子をもうけていたのだ。
苦々しく思いながらも、祝辞を述べると、家斉は「大事なつとめを成しえ、安堵(あんど)しておる」と言う。
定信は「しかしながら、上様には仁政をなすため学を修める務めもまたございます。聞くところによりますと、大奥に入り浸り、栗山博士のご講義もご不調にてお休みがちとのことで」と説く。栗山博士とは、阿波蜂須賀家の儒者だった柴野栗山(りつざん)のことで、定信が将軍家のお抱えとして呼んだ人物だ。
「それぞれ秀でたことをすればよいと思うのじゃ」と、自分は子づくりに秀でていると堂々と言う家斉に、定信は絶句する。
その後、定信は家斉の“実父”である治済の元を訪れた。
■定信に能面を差し出した治済の意図を深読みするとゾクッ
「突き詰めれば、政など誰でもできるもの。それこそ足軽上がりでもできたわけであるからの。しかし、後継ぎをもうけることは、上様にしかできぬ。ご立派だと思うがの」。家斉と同様に、治済も開き直りともいえる言葉を吐く。なお、「足軽上がり」とは意次のことだ。
定信がいらつくのは、それだけではなかった。質素倹約の世にするべく提言しているにも関わらず、そのときの治済は豪華な能の装束を身に付けていたのだ。
「先ほどから気になっておるのですが、見事なご装束にございますな」と嫌味を込めて言う定信。すると治済は「案ずるな、一文も使っておらぬ」と返し、すべての衣装を家斉の正室の父である島津重豪(田中幸太朗)があつらえてくれたと明かす。
定信が「賄賂も固く禁じましたことご存知にございましょう」と指摘すると、治済がうやうやしく能面を差し出した。「それがしをバカにしておられるのか」と怒りにふるえる定信。すると治済は「いやいや、わしはそなたから十万石ももうろうたゆえ、せめて少しでも返そうと思うたのじゃが」と告げたた。
前回描かれたように、定信は治済の案で老中首座の地位と引き換えに、十万石の領地を差し出したのだが、それは“賄賂”ではないのかと暗に示したのだろうか。ぐうの音も出なかった定信。幕閣でさまざまな画策をしてきた治済の前では赤子同然だ。能を舞い、定信の諫言などまったく気にする風でもない、悠然とした態度の治済の怪物ぶりがまたも際立った。
SNSには「治済と定信の相性最悪過ぎて面白くなってきた」「相性が悪そうなところはこの先楽しみでもある」「治済vs定信のバチバチもっとちょうだい」などの投稿が並び、2人の対峙シーンは楽しみの一つになってきている。
また、放送後、ドラマの公式Xで治済を演じる生田が20代から日本舞踊を習っており、能のシーンを1時間ほどで習得したと明かされた。これに「絵になる」「姿勢、所作素敵です」などのコメントが寄せられていた。
◆文＝ザテレビジョンドラマ部
