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近年、記録的な大雨や集中豪雨による被害が全国各地で発生しており、多くの方にとって避難のタイミングや方法が重要な課題となっています。
大雨が予想される際には、気象情報や避難情報を確認し、警戒レベルに応じて適切な避難行動をとることが自分や家族の命を守るために欠かせません。
この記事では、大雨時の警報や警戒レベルの違いを解説し、状況ごとの避難方法や注意点、避難時に確認すべきポイントを紹介します。いざという時に慌てず行動できるよう、日ごろから備えておきましょう。
大雨の警報と警戒レベルの内訳
警戒レベルとは、災害発生の危険度と住民が取るべき避難行動を、誰もが直感的に理解できるように5段階で示した情報です。
出典:気象庁「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」
大雨に備えるためにも、まずは大雨に関する警報や警戒レベルについて、理解を深めましょう。
大雨警報・洪水警報・特別警報の違い
大雨に関する気象警報には、「大雨警報」「洪水警報」「大雨特別警報」があります。それぞれの警報が発表される状況や対象となる災害の違いを、以下の表にまとめました。

大雨警報と大雨特別警報は、主に土砂災害と浸水害への警戒を呼びかけるために発表されます。「大雨警報(浸水害)」「大雨警報(土砂災害・浸水害)」「大雨特別警報(土砂災害)」のように、警戒すべき災害が明示されています。
また、大雨特別警報は、大雨警報の基準をはるかに超える危険度の高さで発表される警報です。発表時には避難所への移動も危険な状況になっている場合もあり、今いる場所で直ちに命を守る行動が必要となります。
一方、洪水警報は河川の氾濫や堤防の決壊、これによる浸水が対象となる警報です。大雨警報とは対象が異なるほか、大雨特別警報のような洪水に関する特別警報はありません。
警戒レベル1~2:早期注意・避難行動の確認
警戒レベル1~2は、災害が発生する前の早期注意と避難行動の確認を目的とした段階です。
▼警戒レベル1の場合
最新の気象情報や防災情報に注意し、備えを始めます。
▼警戒レベル2の場合
避難が必要になる前に、避難方法や避難場所を再確認する段階です。自宅や職場のハザードマップを確認し、どんな災害が起こりやすいかを確認し、避難場所や経路、持ち出し品を準備しましょう。
警戒レベル3:高齢者等避難
警戒レベル3は、災害の危険性が高まった際に、高齢者や避難に時間がかかる方が早めに避難を開始することを目的とした段階です。
この段階では、高齢者以外にも、障害のある方や乳幼児、妊婦など、避難に時間がかかる方やその支援者について、危険な場所から速やかに避難を始めます。
それ以外の方も、避難の準備や情報収集を進め、いつでも避難できるように備えておくことが大切です。
なお、大雨警報と洪水警報は警戒レベル3相当の気象警報となります。
警戒レベル4:避難指示(全員避難)
警戒レベル4は、災害発生の危険が非常に高まった際に発表される避難指示(全員避難)の段階です。
この段階では、危険な場所にいるすべての人が速やかに避難を開始することが求められます。高齢者や障がいのある方だけでなく、該当地区の住民全員がためらわずに避難行動を取る必要があります。
また、夜間は視界が悪く、増水した道路や側溝、河川の位置がわかりにくく、転落や流される危険性が高まります。暗い中での避難は思わぬ事故につながることも多いため、できるだけ明るいうちに避難を終えることが重要です。
警戒レベル5:緊急安全確保
警戒レベル5は、災害がすでに発生しているか、発生が切迫している極めて危険な段階です。
この段階では、命の危険が迫っており、安全な避難ができなくなっていると想定されます。今いる場所で直ちに命を守るために、最善の行動を取る必要があります。
このレベルになってからの避難は危険であるため、警戒レベル4までに避難を完了させておくことが重要です。
もし避難が危険な状態になってしまった場合は、無理に外に出ず、建物の上階や崖・川から離れた部屋など、少しでも安全な場所に移動して命を守るための行動に切り替えます。
なお、大雨特別警報は警戒レベル5相当の気象警報となります。
避難前に必ず確認したい4つのポイント
大雨による災害時に安全に避難するためには、事前の準備と確認が重要です。ここでは、避難前に確認したい4つのポイントを紹介します。
ハザードマップを確認
災害時に避難が必要になるかどうか、まずはハザードマップを確認しておきましょう。ハザードマップで浸水や土砂災害の対象エリアに入っている場合、自宅・職場・学校の3地点について紙で印刷しておくことが大切です。
ハザードマップはネットで確認できますが、災害時には通信障害が発生するため、ネットがつながらない可能性があります。そのため、事前に紙で印刷して備えておくと安心です。
ハザードマップで自宅や通勤、通学先に災害リスクがない場合、無理して避難する必要は原則的にありません。ただし、中小河川や用水路、崖などはハザードマップに載っていない場合もあるため、必ず現地で事前に確認しておきましょう。
避難先の優先順位
避難先を選ぶ際は、優先順位をつけておきましょう。以下の5点は、避難先の優先順位の例です。
① (自宅がハザードマップで安全とされている場合は)在宅避難
② 安全な親戚・知人宅
③ 旅館・ホテルなど宿泊施設
④ 車中
⑤ 学校や公民館などの指定避難所
避難先に優先順位をつけておくべき理由は、災害時に安全かつ効率的に避難できるようにするためです。
近年は、むやみに避難所へ行くのではなく、災害リスクに応じて避難所以外の避難先を検討する「分散避難」の考え方が広まってきています。
避難ルートの危険物を確認
避難ルートを決める際には、川沿いやアンダーパスなどの危険箇所を事前に確認し、必要に応じて迂回ルートを検討しておくことが重要です。
実際に避難経路を歩いてみて、側溝や橋、夜間に見えにくい場所などもチェックし、危険箇所を家族で共有しておきましょう。避難ルートの地図を作成し、危険箇所や注意点を書き込んでおくと、いざという時に役立ちます。
ハザードマップと同様に、ご自身で作成した避難ルートの地図は印刷して手元に置いておきましょう。
