冴えないおじさんにしか見えない
はっきり言って晴彦さんは顔が整っているわけでもなく、身長も170cmのずんぐりむっくりした体型でお世辞にもかっこいいとは言い難い見た目だそう。それで綾音さんはせめて清潔感を出して印象アップするようにと工夫して、パリッとしたシャツなど綺麗めでちょうど良いシルエットのシンプルな服を選んでいました。
「モデルさんのようなスタイルの良いイケメンのアメカジはかっこいいと思いますが……。正直、晴彦が着るとスタイルの悪いのが強調されて、ただの冴えないおじさんにしか見えないんですよね」
そして、以前は服にこだわりがなかったので綾音さんの言うことを素直に聞いてくれた晴彦さんでしたが、アメカジ沼にズブズブハマっていき古着屋巡りに夢中になり、服やスニーカーを大量に買ってくるようになってしまったそう。
「しかもある時レシートが落ちていたので何の気なしに見てみたら、スニーカーが4万円にリバーシブルのスカジャンが22万円だったんですよ。私、古着がそんなに高いだなんて思っていなかったので……。ビックリしすぎて呼吸が止まりそうになってしまいました」
彼氏を見下していることに気づいて
その時に綾音さんは、そんな誰かの着古した服にそんな金額を注ぎ込むことが全く理解できず「だったら私にハイブランドのお財布でも買ってくれた方がよっぽど有効なお金の使い方なのに」と思ってしまいました。「そして極めつけは、私に古着のGジャンとスカートを買ってきた晴彦が『そんなつまらない服ばかり着てないでこっちを着てみなよ。味があるでしょ?』と言ってきたことです。そのしたり顔を見て、思わず『はぁ? ダサいお前にそんなこと言われたくねーし』と爆発しそうになってしまいまいした。
ですが『でもこれって、私が晴彦にやっていたことと同じじゃん!』とハッとして、とても複雑な気持ちになってしまったんですよね」
「結局私は晴彦のことをダサいと見下しているのかも。だって晴彦がせっかくファッションに目覚めたのに、私は自分の好みとは違うからと全否定しているし。しかも偉そうに、自分はセンスがあるからとコーディネートしてやってるつもりになって、いざ晴彦が私に似合う服を選んできてくれても、袖を通す気が1ミリも起きないなんて……」と、己の自分本位さに打ちのめされてしまいました。
そして、「私はまだまともに人を愛することもできない未熟者で、結婚する資格なんてないんじゃないか」と自信を失ってしまった綾音さん。
自分の本当の気持ちまでよく分からなくなり、そのことを晴彦さんへ素直に伝えて、話し合うことにしました。

