
横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。9月14日に放送された第35回「間違凧文武二道(まちがいだこぶんぶのふたみち)」で、妖怪画の名手・鳥山石燕(片岡鶴太郎)が庭先で見たものに視聴者が注目した。(以下、ネタバレを含みます)
■数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く
森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く痛快エンターテイメントドラマ。
蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎の一つといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。
幕府“新時代”を目指す権力者・田沼意次役で渡辺謙、美人画が大評判となる喜多川歌麿役で染谷将太、蔦重の妻・てい役で橋本愛らが出演。語りを綾瀬はるかが務める。
■雷鳴がとどろく中で石燕が庭先で何かを見る
歌麿が幼いころに出会い、瞬時に絵の才能を見出した石燕。「人まね歌麿」という評判を聞いて、当時の少年かもしれないと会いに来た石燕に、歌麿は自分の絵を描きたいと弟子入りした。
石燕の元で自分が描きたいと思ったものと向き合う歌麿。第35回では、よき伴侶を得て、過去の呪縛からも解放され、ずっと苦しんでいた「笑い絵」(※性風俗を描いた春画のこと)を描き上げることができた。
その中で石燕のエピソードが注目された。
意次の訃報を受け、これ以後、民が恨みをぶつける相手がいなくなるとして、葬列に投石してもかまわないとした定信(井上祐貴)。そんな定信に怒るように雷鳴がとどろき、その場にいた反田沼派だった松平信明(福山翔大)は「負け犬の遠吠えですかの」とつぶやいた。
同じころ、雷が鳴り響く中で、不意に何かを感じた石燕。障子を開け、庭先のほうへ目を凝らし、「何者じゃ?何者じゃ…そなたは」と声を掛けた。
■石燕の遺作となった絵を見た蔦重が恩人の名を口にする
一瞬の稲光に照らされて見えたのは、流水紋の着物らしきもの。よく見れば、刀の柄もあった。そこでハッとさせられる。流水紋といえば、亡き平賀源内(安田顕)がよく着ていた羽織の模様だ。ドラマ公式サイトにある人物紹介の欄でも見てとれる。
意次と懇意にしていた源内は、エレキテル装置の発明もしていた。エレキテルとは電気。雷は電気であり、深読みすれば意次と源内がつながっていく。
第33回で「見えるやつが描かなきゃ、それは誰にも見えぬまま消えてしまうじゃろ?その目にしか見えぬものを現してやるのは、絵師に生まれついた者の務め」と言っていた石燕。庭先を見つめながら「いごくな、いごくなよ(※動くなの意味)」と言って、筆を手に取り、その姿を描き留めていった。妖怪画の名手である石燕が見たものは、きっと“妖(あやかし)”。その正体は源内なのか…。
石燕が描いたものが明らかになる。歌麿が石燕の死を蔦重に報告したときだ。
歌麿は、石燕が息絶えるそのときまで描いていた絵を蔦重に渡す。描かれていたのは雷獣。蔦重は「雷を起こす妖…」とぽつりとつぶやき、ふと一点を見つめた。歌麿が「どうした?」と聞くと、「あぁ、いや、なんとなくだけど、この辺が源内先生っぽいなって」と蔦重は雷獣の顔の部分を指した。「まぁ、妖になってても不思議ではないお人ではあったよね」と源内のことを思い返す歌麿。
一連の流れから視聴者からも「妖の着物が源内先生?」「やっぱり源内先生?」と推測が上がった。
第34回で、定信が作ろうとしている世に蔦重が「書をもって抗う」ため、意次をおとしめることになることへの許しを求めに行ったとき、「『許さぬ』などと申せるはずがなかろう。もし、そんなことをしたら、源内があの世から雷を落としてこよう」と言うシーンがあった。意次のことを迎えにくると同時に、自分が愛した自由をなくそうとしている世に雷を落としに来たのだろうか。歌麿を絵師として押し上げただけでなく、物語の因果をつないだような石燕。石燕だから見えるドラマチックな展開が見応えがあった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

