緑内障のセルフチェック法と受診サイン

緑内障のセルフチェック方法はありますか?
緑内障は初期に自覚症状がほとんどありませんが、早期発見のためにセルフチェック方法が役立つことがあります。ご自身で「緑内障かどうか」を判断するのはまず不可能ですが、それでも視野の異常に気付くきっかけとして次のような方法があります。セルフチェックはあくまで目安であり、緑内障の早期発見にはやはり眼科での専門的な検査が必要です。下記の方法で少しでも異常を感じたら、放置せず速やかに眼科を受診しましょう。特に、40歳以上の方や強度の近視の方は、自覚症状の有無に関わらず年に1回程度は定期的に眼科検診を受けることをおすすめします。
片目ずつ確認する方法
普段は両目で見ているため視野の欠けを脳が補ってしまいます。そこで手のひらなどで片目を隠し、もう片方の目で一点をじっと見つめてみましょう。その状態で、視界のなかにぼやけたりかすんで見える部分がないかゆっくり確認します。右目・左目それぞれで行い、片目だと見づらい範囲があると感じたら要注意です。
ノイズフィールドテスト
パソコンやスマートフォンを使った簡易テストで、画面全体に表示した砂嵐模様(ノイズ)の中に見えにくい部分がないかチェックする方法です。中央のマークを見ながら片目ずつ試すと、視野の一部欠損を発見しやすくなります。
日常生活での気付き
最近人や物によくぶつかるようになった、見える範囲が狭くなった気がする、暗い場所で物が見えにくい、信号を見落としかけた、といったことが増えた場合も視野異常のサインかもしれません。
緑内障で受診する目安を教えてください
「見えにくい」「視野が狭い気がする」といった症状に少しでも心当たりがあれば、早めに眼科を受診するようにしましょう。上記セルフチェックで異常を感じた場合はもちろん、なんとなくでも視界に違和感を覚えたら、一度検査を受けてみましょう。特に片目ずつで見え方が違うと感じたら要注意です。また、以下のような条件に当てはまる方は症状がなくても検診を受けることが推奨されています。
40歳以上
家族に緑内障の方がいる
強度近視
そのほかの危険因子高血圧や糖尿病がある、長期間ステロイドを使用している、目のケガや手術の経験がある方もリスク因子になります。
眼科検診では視力や眼圧測定に加えて眼底写真なども撮影されます。緑内障は自覚症状なく始まるケースが大半なので、「何も症状がないから大丈夫」と油断せず、早め早めの受診を心がけてください。
緑内障で眼科を受診するとどのような検査を受けますか?
緑内障が疑われる場合、眼科では主に次の3つの基本検査を行います。
眼圧検査
目の硬さ(眼圧)を測定します。目と空気を当てたり、麻酔の目薬をさして専用の器具で角膜に軽く触れたりして測ります。
眼底検査
瞳孔から目の奥をのぞき、視神経の状態を観察します。必要に応じて瞳孔を開く目薬を使い、詳しく目の奥を調べます。
視野検査
専用の視野計で、見える範囲に欠けがないか調べます。暗室で点滅する光を見る方法(静的量的視野検査)が一般的です。
さらに検査として、隅角検査やOCT(光干渉断層計)による検査を行うこともあります。眼科ではこれらの検査結果を総合して緑内障かどうか、どのタイプか、進行度はどの程度かを判断します。
緑内障の治療方法を教えてください
緑内障の治療目標は、視神経の障害進行を食い止めることです。残念ながら傷んだ視神経を元どおりに回復させる治療法はなく、一度失った視野を取り戻すことはできません。そのため、これ以上悪くしないことが治療の基本方針となります。
緑内障と診断されたら、まずは点眼薬による治療が開始されます。緑内障点眼薬には眼圧を下げるさまざまな種類があり、1種類で効果不足な場合は複数の目薬を併用します。点眼治療で十分な眼圧低下が得られない場合や、点眼しているのに視野障害が進行してしまう場合には、レーザー治療や手術も検討されます。レーザー治療や手術にはさまざまな種類があり、緑内障の重症度や眼圧などによってどの治療を行うかを決めます。
いずれのタイプの緑内障でも、治療は基本的に一生涯続くと考えてください。現在のところ、眼圧を下げる以外に視神経を守る確かな治療法はありません。点眼薬や手術で眼圧が安定すれば、その方の残っている視野は維持できる可能性が高まります。そして、適切にコントロールできれば、緑内障と上手に付き合いながら視力・視野を保って生活することも十分可能です。
編集部まとめ

緑内障は放っておくと本人がまったく気付かないうちに進行する病気です。視野が欠けても脳が補正してしまい、異常に気付いたときにはかなり進行していたというケースも少なくありません。しかし、早期に発見し適切な治療を始めれば、その後の進行を抑えて一生視野と視力を保つことも可能な病気です。歳のせい、疲れ目のせいと決めつけず、「おかしいな」と思ったら早めに眼科で検査を受けてみましょう。少しでも不安があれば遠慮なく専門医に相談し、生涯見える喜びを保っていきましょう。
参考文献
よくわかる緑内障―診断と治療―(公益社団法人 日本眼科医会)
緑内障診療ガイドライン(第 5 版)

