
監修医師:
渡邊 雄介(医師)
所属
国際医療福祉大学教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
急性副鼻腔炎の概要
副鼻腔炎とは、顔の中心部にある空洞状の空間で鼻の中につながっている副鼻腔の中に、炎症がおこっている病気のことで、膿がたまった場合には「蓄膿症」とも呼ばれます。発症してから4週間以内の副鼻腔炎を「急性副鼻腔炎」と呼びます。
鼻づまり、鼻漏(鼻汁が流れ出てきて自覚症状も伴うもの)・後鼻漏(喉の側に鼻汁が垂れる場合)などの上気道症状や、頭痛、頬の痛み、集中力の低下などの症状を伴うのが特徴です。
副鼻腔は「篩骨洞 (しこつどう)」「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」「前頭洞(ぜんとうどう)」「上顎洞(じょうがくどう)」の大きくは4つの部位にわけられ、中でも上顎洞が最も炎症が起きる可能性が高い部位とされます。小児の場合は、出生時は篩骨洞と上顎洞の2つが大きく、成長とともに蝶形骨洞と前頭洞が発達していきます。
急性副鼻腔炎は、小児〜高齢者まで幅広い年代で発症します。適切な治療を行うことで多くのケースが10日以内に治癒しますが、慢性副鼻腔炎への移行(3ヶ月以上、副鼻腔炎の症状が続く場合)や髄膜炎、硬膜下血腫、眼窩膿瘍などの合併症が引き起こされるケースもあります。

急性副鼻腔炎の原因
急性副鼻腔炎の主な原因はウイルス感染です。新型コロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、オルソニューモウイルス(RSウイルス)など、多くが上気道感染症(いわゆる風邪およびその類縁疾患)の原因となるウイルスです。
細菌感染でも副鼻腔炎はおこり、原因菌としては、肺炎球菌(30%程度)、インフルエンザ菌(30%程度)、モラクセラ・カタラーリス(20%程度)となっています。
(出典:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2013年追補版))
ウイルスや細菌以外には、真菌(カビ)が原因で引き起こされる急性副鼻腔炎もあり、糖尿病やHIVなど、免疫が低下している病気を伴っている場合にはそのリスクが高くなります。
また、アレルギーで局所的に粘膜が浮腫を起こし、粘液の通り道が塞がることで急性副鼻腔炎を引き起こす場合もあります。
副鼻腔の役割の一つは、吸い込まれた空気に含まれる汚染物質やほこり(以下、抗原)などを、副鼻腔を覆う粘液でろ過することです。ろ過された抗原は、微細な毛「繊毛」を使って、鼻腔と副鼻腔をつなぐ管を通り、鼻腔から排出されます。そのため、普段は菌がほとんど増えない状態を保っています。しかし、鼻腔や管で炎症が起こると、抗原を正常に排出できず、副鼻腔内で病原体が増殖し、反応してできた膿がたまります。これが急性副鼻腔炎の状態です。
急性副鼻腔炎の原因のほとんどはウイルス感染ですが、重大な症状が3〜4日続く場合や黄色く濃い鼻汁や鼻漏といった症状が10日以上続く場合、発熱や疼痛が強い場合などは、細菌感染である可能性があります。
稀ではありますが、増殖した細菌が脳や眼窩まで広がり、重篤な合併症を引き起こす場合もあります。小児の場合は、篩骨洞から眼窩感染、前頭同から頭蓋内合併症が起きることもあります。

