脳震盪の症状とは?メディカルドック監修医が脳震盪の症状・原因・発症しやすい人の特徴・検査・治療法なども解説します。

監修医師:
㮈本 悠嗣(医師)
奈良県立医科大学医学部卒業後、市立奈良病院で初期臨床研修を修了。神戸市立医療センター中央市民病院救急科専攻医、同院脳神経外科専攻医を経て、2024年大阪大学大学院脳神経外科専攻に進学。救急専門医、脳卒中専門医、脳神経血管内治療専門医、脳神経外科専門医。救急医療から脳神経外科領域まで幅広い診療経験を積む。脳卒中や脳血管障害の高度専門治療・研究に従事し、患者さん一人ひとりに寄り添った医療の提供を目指している。
「脳震盪(のうしんとう)」とは?
脳震盪とは、頭部に外力が加わることで脳が一時的に機能障害を起こす状態です。医学的には「軽度外傷性脳損傷」とも呼ばれ、意識消失を伴わない場合も多く存在します。
脳震盪は、頭部への直接的な打撃だけでなく、急激な加速・減速によっても発生します。脳が頭蓋骨内で揺さぶられることで、神経細胞の機能が一時的に障害され、様々な症状が現れます。多くの場合、構造的な脳損傷は認められないですが、機能的な障害が生じうるため、受賞早期から軽症と考えずに、適切な対応が必要な重要な病態です。
スポーツ外傷、交通事故、転倒など日常生活で起こりやすく、症状が軽微に見えても脳の機能に影響を与えるため、正しい知識と対応が求められます。
脳震盪の代表的な症状
頭痛・めまい
脳震盪後最も頻繁に現れる症状で、鈍痛から激痛まで様々な程度の頭痛が生じます。めまいは立ちくらみ様のものから回転性のものまであり、バランス感覚の異常を伴うことが多いです。症状は受傷直後から数時間後に現れることもあります。
すぐにできる処置として、安静にして横になり、頭部を心臓より高い位置に保ちます。冷たいタオルで頭部を冷やし、暗く静かな環境で休息を取ります。水分補給は少量ずつ行い、急激な体位変換は避けてください。
頭痛やめまいの症状については脳神経外科または救急科を受診してください。頭痛が徐々に悪化する場合や、めまいで歩行困難な場合は緊急性が高く、速やかな医療機関受診が必要です。
嘔気・嘔吐
脳震盪により脳の嘔吐中枢が刺激され、持続的な吐き気や反復する嘔吐が生じます。食事摂取に関係なく現れ、水分摂取も困難になることがあります。症状は数時間から数日間続くことがあります。
このような場合には、横向きに寝かせ、嘔吐物による窒息を防ぎます。少量ずつの水分補給を心がけ、固形物の摂取は控えます。吐き気止めの市販薬は医師の指示なく使用しないでください。
嘔気・嘔吐の症状については救急科あるいは脳神経外科を受診してください。繰り返す嘔吐で脱水症状が現れる場合や、血液を吐く場合は緊急受診が必要です。
意識障害・記憶障害
軽度の意識レベル低下から、受傷前後の記憶が曖昧になる逆行性健忘、新しい情報を覚えられない前向性健忘まで様々です。会話の内容を忘れる、同じ質問を繰り返すなどの症状が現れます。
このような場合、患者を一人にせず、常に観察できる環境を整えます。刺激を避け、静かな環境で休息させます。記憶の混乱に対して無理に訂正せず、安心できる声かけを行います。
意識障害・記憶障害の症状があれば脳神経外科または救急科への緊急受診が必要です。意識レベルの低下や記憶障害は重篤な脳損傷の可能性があるため、速やかな専門医による評価が重要です。
集中力低下・思考力の障害
注意力散漫、判断力の低下、思考速度の遅延が生じます。簡単な計算ができない、話の内容を理解できない、決断に時間がかかるなどの症状が現れます。学業や仕事のパフォーマンスに顕著な影響を与えます。
症状を落ち着かせるために重要なことは、複雑な作業や重要な判断を要する活動は避け、十分な休息を取ることです。読書やテレビ視聴など脳を使う活動も控えめにします。段階的に活動レベルを上げていくことが重要です。
集中力の低下や思考力の障害がある場合には、脳神経外科または脳神経内科を受診してください。症状が1週間以上持続する場合や、日常生活に支障をきたす場合は継続的な医学的管理が必要です。
認知機能障害
脳震盪による認知機能障害では、注意力散漫、判断力の低下、思考速度の遅延が主な症状として現れます。具体的には、簡単な計算ができない、会話の内容を理解できない、決断に時間がかかるなどの症状が生じます。また、「頭に霧がかかったような感覚」を訴えることも多く、学業や仕事のパフォーマンスに顕著な影響を与えます。これらの症状は受傷直後から数時間かけて顕在化することが特徴的です。
このような場合は、複雑な作業や重要な判断を要する活動は避け、十分な休息を取ることが最も重要です。読書、テレビ視聴、スマートフォンの使用など脳を使う活動も控えめにし、認知的安静を保ちます。静かで刺激の少ない環境で休養し、段階的に活動レベルを上げていくことが回復への近道です。コミュニケーションは簡潔に行い、一度に複数の指示を与えないよう配慮します。
認知機能障害が認められた場合は、脳神経外科または神経内科を受診してください。特に症状が1週間以上持続する場合や、日常生活に支障をきたす場合は継続的な医学的管理が必要です。また、意識レベルの低下、症状の悪化、激しい頭痛、繰り返す嘔吐などがある場合は、直ちに救急外来を受診すべきです。適切な診断と管理により、多くの場合は1か月以内に改善が期待できます。

