「運動後の血圧」はどうなるかご存じですか?運動中の注意点も医師が解説!

「運動後の血圧」はどうなるかご存じですか?運動中の注意点も医師が解説!

運動後の血圧はどうなっているかご存じですか?メディカルドック監修医が運動後の血圧のメカニズムや運動中の注意点について解説します。

伊藤 陽子

監修医師:
伊藤 陽子(医師)

浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

運動は血圧にどう影響を与えるのか?

一般的に、運動によって心臓の動きが活発になると血圧は上昇しますが、適度な運動を続けると血圧は低下してきます。ここでは、運動直後に起こりうる血圧の変化と、上がる理由・下がる理由を説明します。

運動直後の血圧が高くなる時

運動直後の収縮期血圧が高くなる現象は、一時的なものであれば正常な生理反応です。運動中は筋肉に多くの酸素や栄養を運ぶため、心拍数は増加し、血管の収縮力が強くなって交感神経が緊張するためです。
低・中強度の運動は収縮期血圧の上昇はわずかですが、高強度の運動は著明な血圧上昇を認めるため、もともと高血圧の人には勧められません。

また、運動負荷により著明な高血圧がみられる状態を「運動誘発性高血圧(EIH)」と呼び、注意が必要です。
EIHは、運動負荷時に収縮期血圧が男性で210mmHg以上、女性で190mmHgに達する病態です。このEIHはアスリートや健康な大人に見られます。EIHは将来的に高血圧を発症するリスクとなっている、心血管系の病気の発症のリスクとなっている可能性が報告されています。このため、EIHを指摘された場合循環器内科を受診して相談をすることをお勧めします。

普段高血圧に当てはまらなくても、運動後に血圧が急激に上昇する場合には将来高血圧に移行する可能性が高いとも言われています。なるべく早く気がついて、対策を取ることが望ましいでしょう。

運動直後の血圧が下がる時

運動を中止すると、筋肉のポンプ作用が働かず心臓へ戻る血流が減ります。また、運動後は収縮した血管が元に戻り、血圧を上げようとする交感神経の緊張が解けて血圧が安静時の状態まで下がっていきます。急に運動をやめたときには心拍数の低下、一回の拍出量の低下、静脈還流量の減少が急激に起こり、血圧が下がりやすくなるため5〜10分ほど徐々に運動を減らすクールダウンを行うことがすすめられます。

生理現象のほか、運動前の安静時血圧よりも運動直後の血圧が低下する運動後低血圧がみられることもあります。これは起立性低血圧の一種で、心拍数が減少しても血管が拡張したままになり、静脈で心臓に戻ってくる血液量が減少し血圧が下がります。

急に立ち上がったりすると、立ちくらみや気分が悪くなることがあるのはこの現象のためです。水分摂取で予防できる、という研究結果もありますので、意識して行いましょう。

運動後どのくらいで血圧は戻る?

運動直後に上昇した血圧が安静時の血圧に戻る時間は、一般的に運動終了してから約5〜15分ほどだと言われています。軽〜中等度の強度の運動では、血圧は運動終了後5分でかなり低下し、10〜15分ほどで安静時の値に戻ることが多いでしょう。回復するまでにかかる時間は、年齢・基礎疾患・日頃の運動習慣などによって個人差があります。血圧を気にされる方は、ご自身の血圧がどの程度で元に戻るか目安を知っておくといいでしょう。

血圧を測定するのは運動後どれくらい経過した後が良い?

運動直後の血圧測定では、運動による一過性の高値が反映されてしまうため、正確に行えません。運動後の血圧測定について、運動後に血圧が安定するまでは少なくとも15分以上、場合によっては20分程度かかった、という報告もあります。できれば15〜20分以上の安静時間を設けることが望ましいでしょう。

配信元: Medical DOC

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