
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『スーパーファミリーゲーミング』(テレビ朝日)をチョイス。
■様々な”2人”『スーパーファミリーゲーミング』
2人のプロゲーマーが自らの父親に『ストリートファイター6』をコーチングをし、その父親同士が対戦するまでを追うドキュメンタリー番組、『スーパーファミリーゲーミング』。2人のプロゲーマーは、29歳のトラボ選手と16歳のざぶとん選手。コーチングの経験も豊富な2人が、実の父親をどのように勝利へ導くのか、MCのスタンミじゃぱんと丹生明里がスタジオで見守る。番組は全4話、現在は3話までが放送済みで、TVer等で配信中。
見ていて自然と笑みがこぼれてしまうような、とにかく良い番組である。選手両名はもちろん、2人の父親の人柄が素晴らしい。息子とのコミュニケーションに喜ぶトラボ父と、息子の成長をしみじみ喜ぶざぶとん父。共感型と見守り型とでも言えそうな、タイプの違う両者に共通する愛の深さには落涙ものだ。そんな2人の最終決戦の行方がどうなるのか、来週の最終話が楽しみで仕方がない。
MCの2人も気持ちが良い。素直に感情を表現し、ワイワイと楽しそうに見ている。うまく力が抜けているというか、「段取り」みたいなものを一切感じさせない自然体で、視聴者である我々と感情を共有してくれる。流麗さによって「段取り」が浮かび上がってしまう皮肉をうまく回避しているのは、初MCの初々しさという特権だけでなく、両名の人柄によるところが大きいだろう。
このように、様々な「2人」で構成された番組。私には父親がいないから、父子関係にはずっと憧れがある。『スト6』始めて2週間でプラチナ行っちゃうような父親、欲しかったなあ。やっぱり、親とゲームをする憧れってあったもの。その点、母親がゲーマーだった私は恵まれていた。私が苦戦している真島吾朗を代わりに倒してくれたのは母親だったし、私が寝ている間にリズム天国をすべてノーミスコンプリートしていたのも母親だった。『耽美夢想マイネリーベ』で、それぞれ違うイケメンを攻略しようと頑張ったのも良い思い出だ。母親の推しはナオジ、私の推しはエドヴァルドだった。
父親曰く、元々ざぶとん選手は内向的で臆病な性格だったという。それが今や、『スト6』を通じて様々な仲間と巡り合い、一緒に訪れた父親そっちのけで、練習会で会った仲間たちとコミュニケーションを取っている。ゲームに限らず、ひとつのことを中心に生まれる絆って、尊いですよねえ。さらに家族も入ってくると、「世界がつながった」ような気がして嬉しい。トラボ選手の兄が、「俺はトラボの最初のファン」だとトラボ公式Tシャツを着て登場したときは本当に泣けたね……。どこまでも良い家族だ。
あらゆる絆のうえに行われる最終決戦は、9月25日の26時55分から。終わってしまうのが寂しい……。
■文/城戸

