令和の時代に増加する若者たちの『学び直し』…引きこもりだった17歳が通う『夜間中学校』の果たす役割<BS12スペシャル>

令和の時代に増加する若者たちの『学び直し』…引きこもりだった17歳が通う『夜間中学校』の果たす役割<BS12スペシャル>

ドキュメンタリー「ぼくは、夜間中学3年生~挑戦する生き方~」が9月20日(土)、BS12で放送される
ドキュメンタリー「ぼくは、夜間中学3年生~挑戦する生き方~」が9月20日(土)、BS12で放送される / ※提供写真

夜間学校と聞かれ、思い浮かべられる多くが夜間高校、夜間大学だろう。しかし、『夜間中学校』は、あまり知られていない。現在、32都道府県に62校が設置されている夜間中学校(令和7年、文部科学省調べ)。その内の1校、鳥取県鳥取市の「県立まなびの森学園」に入学した17歳の青年の姿を追ったドキュメンタリー「ぼくは、夜間中学3年生~挑戦する生き方~」(夜9:00-10:00)が、9月20日(土)、BS12 トゥエルビ(BS222ch※全国無料放送)にて放送される。この番組の放送を機に、夜間中学校の存在、そこでの学びについて伝えていきたい。

■令和になって増加する、10代、20代の夜間中学校の入学者

夜間中学校とは、夕刻から夜にかけて授業が行われる中学校のことを指す。登校は週5日、教員免許を持つ中学校の先生が主に授業を行い、公立は授業料無償。昼間の中学校と同じ中学卒業の資格を得られる。義務教育課程の修了は、進学や就職の道が開ける人生の再スタートの場にもなる。

夜間中学校に通う人はさまざまだ。もともとは戦後混乱期で就労などを余儀なくされた人や、残留孤児たちの学び直しの場として開かれ、現在はいじめや引きこもり、病気で不登校となった人など、それぞれの事情により中学での学びの機会を得られなかった10代から90代までの生徒たちが通っている。

夜間定時高校が全国で400校以上あるのに対して、夜間中学校は32都道府県に62校と数が少ない。今、文部科学省は各都道府県・指定都市に最低1校の設置を目指しており、県立まなびの森学園は2024年4月に鳥取県で初めて開校された夜間中学校になる。

同校には、生徒数の半数を占める12人の10代の若者たちが通っている。教頭の嶋田武弘氏は、「今まである夜間中学とはまた違う雰囲気。学校に何らかの理由で行けなかったという方は、現実問題、若い方にもたくさんいらっしゃる」と現状を語る。

令和の今、夜間中学校に通う生徒の10代、20代がおよそ4割を占め、若い世代の入学者たちは増え続けている。番組ではそんな生徒の1人、新たな一歩を踏み出すため同校に入学した17歳の岩田紘生さんの卒業までを追う。
「学び直し」の生徒たちに取り組み方を考えながら向き合う教員たち
「学び直し」の生徒たちに取り組み方を考えながら向き合う教員たち / ※提供写真


■引きこもりだった岩田さん、40代女性は「中学になる娘に勉強を教えたい」

小学校に違和感がありフリースクールに通うようになり、その後、2年間引きこもりとなっていた岩田さん。素顔、実名での出演、密着されることにはかなり勇気を奮う必要があったはずだ。コミュニケーションが苦手で、先生とも距離がある…というよりも、言葉の伝え方が分からない様子がうかがえる。

しかし、岩田さんは学びに対してとても前向きだ。興味を持つ分野のために進学を目指し、3年生課程を選択する。夜間中学校は、生徒が自分の意思で、どの学年に入学するかを選択できる。そんなところも番組を観て分かる発見だ。

1年生を選んだ40代の女性は、いじめが原因で中学3年目を不登校になったという。学び直したい理由は、「中学になる娘に勉強を教えたいため」だった。60代、美容室経営の女性は不登校だったトラウマをぬぐうべく、夜間中学校に入学した。生徒には、外国籍の方もいる。鳥取で暮らすタイ人の男性は、「日本とタイをつなげたい」と思いを明かし、通訳になるために日本での中学卒業を目指す。

岩田さんをはじめ、彼らの事情を通して夜間中学校の大切さを知ると、当たり前に通過してきた中学での学びがどんなに有難いものだったのかを認識させられる。そして、授業を行う先生たちの姿も印象的だ。
【写真】「一年間で卒業する」。目標を見つけた岩田紘生さんが向き合う“学び直し”
【写真】「一年間で卒業する」。目標を見つけた岩田紘生さんが向き合う“学び直し” / ※提供写真


■言葉をつむぐ難しさに向き合い続けた岩田さん、弁論で伝える【挑戦する生き方】

まなびの森学園の校長・山口京子氏は、番組の中で「私たちは伴走者。主役は生徒、主役が輝く学校。そうなっていかなきゃなと思っています」と、生徒たちに接する気持ちを語る。

事情を抱えた生徒も多い夜間中学校は、勉強だけでなく、心の成長にも手を差し伸べている。岩田さんと、もう1人の生徒で行く修学旅行。目的地や移動手段は、2人が中心になって考える。トラブルはもちろん起きる。それでも先生は、できる限り口を出さない。

「教員主導ではない。行って楽しかった、で終わっちゃいけない。自分たちで考えて動いていくほうが学びが多い」と、同行する先生はその意図をカメラに向かって説明する。自分たちで決める修学旅行、先生と重ねる一歩一歩が生徒を成長させる。

秋の文化祭では、言葉をつむぐ難しさに向き合い続けた岩田さんが、先生、生徒たちを前に、弁論発表を行う。テーマは、【進路】。そして、岩田さんは【挑戦する生き方】という題目で弁論を披露する。

「日本では、小学校、中学校、高校、そして、大学や専門学校へと進む道が開かれています。皆さんはこの進学のシステムに疑問を持ったことはありませんか?」と、問いかけて始まる弁論はとても印象的だ。

弁論は、討論とは違う。自分の意見を聴衆に伝えるものだ。一度は進学システムを外れた岩田さんだが、決して学び自体が嫌いではなかったこと。学び直しを考えた葛藤を、苦手だった言葉にして伝えていく。

■岩田さんの姿が教えてくれる、「学び直す」ことの意味

進みたい目標を決め、今年の春、夜間中学校「県立まなびの森学園」の初めての卒業生となった岩田さん。一年を通して学び直し、心も成長した岩田さんは、しっかり先生たちと向き合って卒業していく。学び直しは勇気がいることだが、絶対に恥ずかしいことではない。それを岩田さんの姿が教えてくれる。

入学時、番組スタッフに対して何も言葉を発せなかった岩田さんは、最後、「一年間通ってみて?」の問いかけに、「考えることの視野と、興味が向くところが広がったと思います。(通っていなかったら)やる気が足りなくてうまくいかない。ずっとまだ家にいたかな」と、はにかみながら言葉をつむぐ。

夜間中学校の存在をあまり知らなかったという人、学び直しをしたいと考える人にはぜひ見てもらいたい番組だ。

ドキュメンタリー「ぼくは、夜間中学3年生~挑戦する生き方~」は、9月20日(土)、夜9時より、全国無料の放送局BS12 トゥエルビ(BS222ch)にて放送される。

◆文=鈴木康道
「学び直し」の生徒たちに取り組み方を考えながら向き合う教員たち
「学び直し」の生徒たちに取り組み方を考えながら向き合う教員たち / ※提供写真

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