“ピッツァ”じゃなくて、“ピザ”でいい
オーナーの梶原洋平さんは、ナポリの有名店「イル・ピッツァイオーロ・デル・プレジデンテ」で修行を積んだ人物だ。でも、彼が目指すのは高級感のある「ピッツァ」じゃない。もっと暮らしの中に根ざした、いつもの「ピザ」だ。
それは、ナポリの街角で見た風景に原点がある。地元の人たちが、当たり前のようにピザ屋に集まり、笑い、語らう。「食べること」よりも、「そこにいること」に意味があるような、そんな場所。

That’s PIZZAの看板メニュー、マルゲリータは950円。ナポリと同じくらいの価格設定にしているのは、「本物の味を、日常のまま届けたいから」。
特別じゃない。だけど、なんだか毎回食べたくなる。取材中にも、「うちは毎回これ頼むねん」と笑う家族連れの声が耳に残った。
薪窯の炎と、まちの熱量と

この店のシンボルとも言える、真っ赤に燃える薪窯。ナポリから船便で運ばれてきた特注の一基。500度を超える高温の中で、ピザはほんの数分で焼き上がる。その火の音すら、どこかこの町の鼓動のようにも聞こえてくる。
2021年の改装で、2階には光が差し込む明るいテーブル席ができた。ここでは子ども向けのピザ教室や、落語イベントも開かれる。いつの間にか、ピザ屋は「ただ食べる場所」から、「集まる場所」へと姿を変えていた。

梶原さんが言う。「いいまちには、“かっこいいピザ屋”がある。」
ここで言う“かっこいい”は、デザインや流行の話じゃない。人が集まって、関係が生まれて、何かが動き出すような。スケボーやファッション、音楽といったカルチャーと日常が交差する空気。その交差点に立つのが、ピザ屋なんだと。
