食道がんの治療法とは?メディカルドック監修医が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「食道がんの初期症状」はご存知ですか?セルフチェック法も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
「食道がん」とは?
食道は、咽頭(のど)と胃の間をつなぐ管状の臓器です。そして、食道がんとは、解剖学的に喉と胃をつなぐ場所にある約25cm程度の食道部位にできる悪性腫瘍のことです。統計学的に、女性よりも男性に多いがんとして知られています。今回は、食道がんの初期症状、検査方法、治療法などを紹介していきます。
食道がんの治療法
食道がんの治療法としては、大きく分類すると内視鏡治療、手術療法、放射線治療、薬物を用いた化学療法の4種類が挙げられており、各々の治療法のメリットを生かしながら、病変の状態や病期に照らし合わせて個々の患者さんに応じた治療を実践します。
内視鏡的切除
まず、粘膜内にとどまっている0期の初期がんでは、食道を温存するように内視鏡で病変部を切除する治療法が推奨されています。
内視鏡的切除は、がんを取り除くために食道内部から行う手術です。この方法には二つの主要な技術があります。一つは、内視鏡の先にある細いワイヤーの輪(スネア)を使って、がんの部分を切り取る「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」です。もう一つは、高周波ナイフを使用して、がんを粘膜下層から剥がすように切り取る「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」です。
この手術は、がんが食道をほぼ全周にわたっている場合でも、5cm以下の大きさならこの方法で治療できます。手術で取り除いた組織は、がん細胞が残っていないか、リンパ節に広がっていないかを病理検査でチェックします。もしがん細胞が残っているか、リンパ節に広がるリスクが高いと判断された場合は、さらなる治療が必要になります。
内視鏡的切除の合併症は出血や穿孔(食道に穴が開くこと)、食道の狭窄(食道が狭くなること)などです。出血や穿孔が起こった場合、吐き気や嘔吐などの症状が現れることがあります。また、治療した場所から出血が持続すると貧血による立ちくらみやめまいが出現するおそれもあります。治療後に今までになかった症状が出現した場合は内視鏡的切除の合併症の可能性があるため、手術をしてもらった医療機関を早めに受診しましょう。
化学放射線療法
食道がんⅠ期になると、手術療法が標準治療として提案されることが多いですが、状況によっては手術と同等レベルの治療効果が期待される化学放射線療法が実践されることもあります。
化学放射線療法は、化学療法(薬でがん細胞を攻撃する治療)と放射線治療(放射線を使ってがん細胞を破壊する治療)を一緒に行うことを指します。この方法は、放射線治療単独よりもより高い効果が期待できます。
化学放射線療法が主に選ばれる場面は手術(内視鏡的切除を含む)でがんを取り除くのが難しい状態の時です。がんのステージとしては初期段階(0期)から比較的進行した段階(ⅣA期)まで、幅広いステージに施行されます。また、さらに進行したⅣB期のがんに対しても、症状を和らげるために行われることがあります。
手術
Ⅱ期・Ⅲ期に進行すると、標準治療法としては手術が可能な健康状態に該当する場合には化学療法を行ったのちに手術するのが第一選択となります。
食道がんに対する外科手術は、現在のところ本疾患に対する標準的な治療法として確立しており、がん病変部の発生している部位が食道のどの部位に位置するかによって手術の具体的な手順が異なってきます。
例えば、頸部に存在する食道がんの場合には、がんが小さい時には頸部食道のみを切除しますが、腫瘍が大きく周囲組織に浸潤しているケースでは咽頭や喉頭、あるいは全ての食道組織を病変部と共に切除して、小腸の一部や胃を利用して食道再建を行います。また、胸部食道に位置するがん病巣の場合には、最近では医療技術の進歩に伴って胸腔鏡や腹腔鏡などを駆使して手術を行えるようになりました。

