心筋梗塞の初期症状を見逃さないことが、適切な対応の第一歩です。胸部の激しい痛みや圧迫感、息切れなど、典型的な症状を正しく理解しておくことで、緊急時に迅速な判断ができます。これらの症状は心臓からの重要な警告サインであり、早期発見が生命予後を大きく左右するため、症状の特徴をしっかりと把握しておきましょう。

監修医師:
滝村 英幸(医師)
2006年3月聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業
2006年4月聖マリアンナ医科大学病院初期臨床研修医
2008年4月済生会横浜市東部病院循環器内科
2016年12月総合東京病院循環器内科
2022年4月総合東京病院心臓血管センター循環器内科心臓血管インターベンション科科長
【資格】
日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医
心筋梗塞の典型的な症状を正しく理解する
心筋梗塞の症状を正しく理解することは、適切な対応を取るために欠かせません。典型的な症状から非典型的な症状まで、幅広く把握しておくことが重要です。
胸の激痛と圧迫感が示す重要な警告
心筋梗塞の症状として代表的なのが、胸部の激しい痛みや圧迫感です。この痛みは「胸を締め付けられるような」「胸の上に重いものが乗っているような」と表現されることが多く、通常15分以上続きます。痛みの強さは個人差がありますが、多くの場合、これまでに経験したことがないほどの強い痛みを感じるとされています。
この胸痛は、心臓の冠動脈が血栓などによって完全に閉塞され、心筋への血液供給が停止することで起こります。酸素不足に陥った心筋細胞は壊死し始めるため、身体が危険信号として強い痛みを発するのです。痛みは胸部中央から左胸にかけて現れることが多く、ときには背中や肩、首、顎、左腕にも放散することがあります。
重要なのは、この痛みが安静にしても改善しないことです。狭心症の場合は安静にすると痛みが和らぎますが、心筋梗塞では血管が完全に閉塞しているため、安静にしても痛みは持続します。
息切れと呼吸困難の進行パターン
心筋梗塞では、胸痛と同時に息切れや呼吸困難が現れることも多くあります。これは心臓のポンプ機能が低下することで、全身に十分な酸素を送ることができなくなるためです。初期段階では軽度の息切れから始まり、病状が進行するにつれて安静時でも呼吸困難を感じるようになります。
呼吸困難の特徴として、横になると症状が悪化し、座位や立位で楽になる起座呼吸が見られることがあります。これは心不全の症状でもあり、心筋梗塞による心機能の低下が原因となっています。また、肺に水が溜まる肺水腫を併発すると、ピンク色の泡沫状の痰が出ることもあります。
呼吸困難は心筋梗塞の重要な警告サインですが、高齢者や糖尿病の方では胸痛よりも呼吸困難が主症状となることがあるため、注意深く観察する必要があります。特に、普段とは明らかに異なる息苦しさを感じた場合は、早急に医療機関を受診することが重要です。
まとめ
心筋梗塞は生活習慣と密接に関連した疾患ですが、適切な知識と継続的な予防策により、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。症状の早期認識、危険因子の把握、生活習慣の改善を通じて、一人ひとりが自身の健康を守ることができます。
定期的な健康チェックと医療機関との連携により、心筋梗塞の予防と早期発見に努めることが、充実した人生を送るための重要な基盤となるでしょう。
参考文献
厚生労働省令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 厚生労働省:循環器疾患について 日本循環器学会:急性冠症候群ガイドライン国立循環器病研究センター:心筋梗塞とは
国立循環器病研究センター:糖尿病
日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン

