緊急避妊薬であるアフターピルの市販化は、女性の健康を守るうえで重要な選択肢を広げる一歩として期待されています。現在日本では医師の処方が必要ですが、欧米諸国の多くでは薬局での購入が可能です。市販化に向けた議論が活発化するなか、安全性の確保と利便性のバランスをどう取るかが課題となっています。

監修医師:
村田 憲保(医師)
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
母体保護法指定医
アフターピルの市販化の現状
アフターピルの市販化は、避妊の選択肢を広げる大きな一歩とされています。医療機関に頼らず入手できる利便性は高い一方、安全性や正しい使用方法の周知が重要です。
市販化の現状と背景
現在、日本におけるアフターピルは医師の処方箋が必要な医療用医薬品として位置づけられています。これは他の多くの先進国と比較すると制限的な状況と言えるでしょう。欧米諸国では薬局での市販購入が可能な国が多く、日本でも市販化を求める声が高まっています。
市販化への議論は、女性の緊急避妊へのアクセス改善という観点から重要性が増しています。現在の制度では医療機関を受診する必要があるため、休日や夜間の受診困難、医療機関が遠方にある地域での入手困難、受診への心理的ハードルなどの課題が指摘されています。
厚生労働省では、これらの課題を踏まえながら慎重に検討を進めています。市販化には安全性の確保、適正使用の確保、未成年者への配慮など、多角的な検討が必要とされているためです。専門家による検討会では、薬剤師による適切な服薬指導体制の構築や、濫用防止対策の必要性なども議論されています。
海外における市販化の状況
海外では多くの国でアフターピルの市販化が実現されています。アメリカでは2013年から年齢制限なしで薬局での購入が可能となり、イギリスやフランスでも同様に薬局での入手が可能です。韓国でも2020年からアフターピルの市販化が開始され、アジア圏でも市販化の流れが見られます。これらの国々では、市販化に際して薬剤師による十分な説明や相談体制の整備、適正使用のためのガイドライン策定などの対策が講じられています。
海外の事例を見ると、市販化により緊急避妊薬の使用率が向上し、意図しない妊娠の予防効果が認められています。一方で、定期的な避妊法の代替としての使用を防ぐための啓発活動の重要性も指摘されています。日本においても、こうした海外事例を参考にしながら、日本の医療制度や文化に適した市販化の在り方が検討されています。
まとめ
アフターピルは女性の緊急時における重要な選択肢であり、その市販化は多くの女性にとって大きな意味を持ちます。適切な効果や値段、入手方法について正しい知識を持ち、必要なときに適切に利用できる環境の整備が求められています。また、性犯罪被害者への支援においても、アフターピルへのアクセス改善は重要な要素となります。
今後の試験販売や制度整備を通じて、より良い緊急避妊環境の実現が期待されます。
参考文献
厚生労働省 – 「「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づく薬局における調剤」及び「薬局・店舗販売業の店舗における要指導医薬品たる緊急避妊薬の販売」について
日本産科婦人科学会 – 緊急避妊法の適正使用に関する指針
内閣府 – 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
厚生労働省 – 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づく緊急避妊に係る取組について
日本薬剤師会 – オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤について

