メディカルドック監修医が亜鉛が不足すると現れる症状などを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「亜鉛の摂取量」はご存知ですか?過剰摂取すると現れる症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修管理栄養士:
武井 香七(管理栄養士)
保有免許・資格
管理栄養士資格
「亜鉛」とは?

亜鉛はミネラルの一種で、人間のさまざまな生理機能に影響を及ぼしています。ミネラルは人の体に約5%含まれる単一元素で、体内に含まれる量によって多量元素と微量元素に分類されます。成人の体に含まれている亜鉛は約2gです。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、鉄・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデンと並んで、亜鉛は微量ミネラルに設定されています。
ミネラルは体内で合成できないため、不足させないためには経口摂取が欠かせません。経口摂取するにあたり、ミネラル同士は吸収や働きに影響を与え合うことがあるため、バランスよく摂取することが大切です。
亜鉛が不足すると現れる症状

皮膚炎
亜鉛が不足すると皮膚炎を発症する場合があります。亜鉛は皮膚のタンパク質の合成に関連していて、亜鉛が不足すると皮膚のターンオーバーが乱れます。この皮膚炎は、目やお口の周り、手足の先に発症するケースが多いです。
赤み
ぽつぽつ
カサカサ
ただれ
上記のような症状が現れ、一見すると乾燥が原因の肌荒れにも見えます。しかし一般的な肌荒れの薬を使用しても改善されないため、そこが見分けるポイントです。様子をみていても改善しない場合は、皮膚科を受診しましょう。
また亜鉛は皮膚だけでなく、髪の毛に関わるタンパク質の合成にも関連しています。髪の毛にはケラチンと呼ばれるタンパク質があり、爪も同様のタンパク質をもとに生成しています。そのため皮膚炎のほかにも、脱毛や爪の変形といった症状にも注意が必要です。
味覚・免疫力の低下
亜鉛の不足は、味覚や免疫力の低下を招きます。味覚を感じる舌の上皮細胞には亜鉛が多く含まれており、亜鉛が不足すると味覚異常が起こります。
舌はターンオーバーが短いため、亜鉛不足の症状が出やすいのも特徴です。味覚障害の約55%が亜鉛の欠乏が原因とされており、炎症や中耳炎といったほかの原因より圧倒的に高い数値です。
また亜鉛は細胞の免疫機能を活性化させる働きや、病原体を排除する免疫機能も持っています。そのため亜鉛が不足すると、ウイルスや細菌に対する免疫力が低下してしまいます。
味覚障害は先述したようにターンオーバー自体が短いため、亜鉛の摂取量を適正値まで戻すことが大切です。
免疫機能の場合も、日々の食生活の改善やサプリなどで亜鉛の摂取量を増やすことになります。味覚障害は耳鼻咽喉科、免疫力に対する不安は内科で相談しましょう。
成長阻害
子どもが亜鉛不足に陥ると、成長阻害を引き起こすことがあります。亜鉛は成長ホルモンやテストステロンの分泌に関わっており、亜鉛不足になるとこれらのホルモンの分泌が悪くなることが原因です。
外国の研究では、発育不全の男子グループは血液中の亜鉛の量が少なかったとしています。さらに良質な食事と硫酸亜鉛を与え続けたところ、20歳の男子が1年間で約13cmも成長したというデータがあります。
子どもの低身長の原因ともなるため、保護者の方は亜鉛不足に注意して食事を与えるとよいでしょう。
さらに亜鉛は筋トレ時に傷付いた筋組織の修復にも関わっており、筋トレの効果を効率よく出したいときに欠かせない栄養素です。大人も子どもも筋肉をつけるために、しっかり摂取しましょう。
また大人の男性が亜鉛不足になった場合、生殖機能の低下を招きます。亜鉛は精子の生成にも関わっているため、生殖機能に心配がある方は亜鉛の一日の摂取量を見直すとよいでしょう。
成長阻害の場合は小児科や小児内分泌科、内分泌内科を受診します。生殖機能の低下が気になる場合は、泌尿器科で対処してもらえます。

