
ショルダーバッグを斜めにかけたら「胸強調してるの?」と男子にからかわれた。言う側は悪気のないおふざけかもしれないが、言われた側は不快感を覚える。こうした「不快」をテーマに描いた本作は、Xで2万いいね、200近いコメントがついた。漫画家・魚田コットンさん(@33kossan33)は、幼少期から性被害に遭い続けたトラウマから、言われることすら嫌悪感を抱くという。今回は、彼女の作品『スカートの呪いが解けるまで』を紹介する。
■「わざわざ言うことじゃなかった」母に否定された幼少期の被害




性的なからかいが苦手な魚田さんの背景には、小学校低学年時の痴漢被害、そして再婚相手である継父による行為というトラウマがある。これらの経験から、魚田さんは親になっても「スカートを履きたい」と言う娘に、「ダメ!せめて下にスパッツを履いて」と言ってしまう。
小学校低学年時、健康ランドのゲームコーナーで子連れの男性にお尻を触られた魚田さん。隣の友人も男性の子どもも気づかない状況で、彼女は何も言えなかった。この出来事を母親に話すと、「ホントに触られてた?」「ちょっと触られただけやろ」と馬鹿にしたような口調で返され、「わざわざ言うことじゃなかった」と自分自身を恥じた。この一件で、母親との関係性の中で被害を言い出しにくい環境ができていった。
追い打ちをかけたのが、小学校5年生の深夜、継父が布団に入ってきたことだ。この出来事は、魚田さんにとって一生忘れられないトラウマとなる。継父は母親のいない隙を狙い、何度も魚田さんに触れたり近づいたりを繰り返した。
■「誰も楽しい気持ちにならない」つらい過去を描く理由
当初は「こんな重くてつらいだけの話、誰も楽しい気持ちにならない」と思いながら描いていた魚田さん。なぜ過去を掘り下げようと思ったのか。きっかけは、ブログで紹介していた「母の再婚相手が色々とアウトだった話」だった。この話が『母の再婚相手を殺したかった~性的虐待を受けた10年間の記録~』として書籍化され、これが漫画を描く大きなきっかけとなった。
ブログには、同じような経験をした人たちからコメントやDMが寄せられ、魚田さんが結婚し子どもを育てている姿が、コメントをくれた人たちの希望になっていると知った。「その方たちにとって希望になっている部分もあるようです。逆に私の希望になったというのが、『こういう漫画を描こう』と思った決め手でした」と語る。
口には出せない思いを抱えている人が多くいることを実感した魚田さん。「私が漫画を描けて世の中に発信できたけど、それができない人もたくさんいる。それなら同じような思いをした人たちに『こういう思いしたことあるよね』『つらかったよね』『でもさ、自分たちは全然悪くないんだよ』ということを伝えるために描いています」と、作品に込めた強いメッセージを語った。
取材協力:魚田コットンさん(@33kossan33)
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。製品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格が異なる場合があります。

