「胸の痛みがない心筋梗塞」がある? 見落とされやすい“危険なサイン”とは

「胸の痛みがない心筋梗塞」がある? 見落とされやすい“危険なサイン”とは

心筋梗塞は必ずしも激しい胸痛として現れるとは限りません。女性や高齢者、糖尿病の方では、一見心臓とは関係のない症状として現れることがあります。上腹部痛や吐き気、極度の疲労感など、非典型的な症状を見落とすと診断が遅れる可能性があるため、これらのサインを正しく理解しておくことが重要です。

滝村 英幸

監修医師:
滝村 英幸(医師)

【経歴】
2006年3月聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業
2006年4月聖マリアンナ医科大学病院初期臨床研修医
2008年4月済生会横浜市東部病院循環器内科
2016年12月総合東京病院循環器内科
2022年4月総合東京病院心臓血管センター循環器内科心臓血管インターベンション科科長
【資格】
日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医

見落としやすい心筋梗塞の非典型症状

心筋梗塞の症状は典型的な胸痛だけでなく、一見心臓とは関係のない症状として現れることもあります。これらの非典型的症状を見落とすと、適切な治療が遅れる可能性があります。

女性と高齢者に多い非典型症状の特徴

女性や高齢者では、典型的な激しい胸痛ではなく、軽度の胸部不快感や上腹部痛として症状が現れることが多くあります。

女性の場合、胸痛よりも首や顎、背中の痛み、極度の疲労感、吐き気、めまいが主な症状となることがあり、これは女性ホルモンの影響や冠動脈の構造的な違いが関係していると考えられています。

高齢者では、胸痛を感じにくくなる場合があり、代わりに意識障害や急激な体力低下、食欲不振などの症状が現れることがあります。また、糖尿病を患っている方は、神経障害により痛みを感じにくくなる無痛性心筋梗塞が起こることもあります。この場合、突然の失神や意識消失が初発症状となることもあるため、注意が必要です。

これらの非典型症状は、一般的な体調不良やほかの疾患と間違えられやすいため、家族や周囲の方が変化に気づくことが重要です。特に、普段と明らかに異なる症状が複数同時に現れた場合は、心筋梗塞の可能性を考慮して早急に医療機関を受診することが推奨されます。

消化器症状として現れる心筋梗塞の警告

心筋梗塞では、胸痛以外に消化器症状が現れることがあります。特に、急激な吐き気や嘔吐、上腹部痛は心筋梗塞の症状として見落とされやすい重要なサインです。これは心臓の下壁や後壁に梗塞が起こった場合に多く見られ、迷走神経の刺激により引き起こされます。

上腹部の痛みは、胃潰瘍や胆石などの消化器疾患と間違えられることが多く、診断が遅れる原因となることがあります。しかし、心筋梗塞による上腹部痛は、一般的な胃痛とは異なり、食事との関連性が少なく、制酸剤などの胃薬でも改善しないことが特徴です。

また、冷汗を伴う吐き気や嘔吐も心筋梗塞の重要なサインです。これらの症状は、心臓のポンプ機能低下により血圧が下がり、自律神経系が刺激されることで起こります。特に、これまで胃腸の調子が良かった方が突然激しい吐き気や上腹部痛を訴えた場合は、心筋梗塞の可能性も考慮する必要があります。

まとめ

心筋梗塞は生活習慣と密接に関連した疾患ですが、適切な知識と継続的な予防策により、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。症状の早期認識、危険因子の把握、生活習慣の改善を通じて、一人ひとりが自身の健康を守ることができます。
定期的な健康チェックと医療機関との連携により、心筋梗塞の予防と早期発見に努めることが、充実した人生を送るための重要な基盤となるでしょう。

参考文献

厚生労働省令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 厚生労働省:循環器疾患について 日本循環器学会:急性冠症候群ガイドライン

国立循環器病研究センター:心筋梗塞とは

国立循環器病研究センター:糖尿病

日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン

配信元: Medical DOC

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