人の腸内で活性するノロウイルスはインフルエンザウイルスの約1/3以下と小さく、胃腸炎を引き起こす原因の多くがこのウイルスです。
特に冬は様々なウイルスが流行しやすい季節です。ノロウイルスの流行も毎年冬ですが、実は1年通して発生しています。
今回はそんなノロウイルスの治療方法や過ごし方を紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「ノロウイルス」の症状・潜伏期間はご存知ですか?感染しやすい食べ物も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
ノロウイルスの治療方法や過ごし方

ノロウイルスには特効薬はないと聞いたのですが…
現在、ノロウイルスに対する特効薬はありません。脱水症状や体力を消耗しないよう水分と栄養の補給を十分にするなど対症療法を行うことが大切です。症状に度合に応じて点滴が必要になる場合もありますが、下痢止めはウイルスが体内から排出される時間が長くなります。治癒までの回復が遅くなる可能性があるため、自己判断で服用しないようにしましょう。
ではノロウイルスはどのように治療を行うのでしょう?
抗生物質は効きませんので特別な治療法はありませんが、脱水症状にならないよう水分補給を十分に行うようにします。嘔吐・下痢がひどく脱水症状を起こしている場合は病院で点滴を行う必要があり、一般的に対症療法として制吐剤や整腸剤投与を行います。
ノロウイルスに家族が感染した場合、どのようなことに注意したら良いですか?
手に触れる共用の物は注意が必要です。特に以下のような項目は徹底されることをおすすめします。トイレの後の手洗いは石鹸を使い厳重に行なって下さい。
体液(血液・体液・尿・便)の処理は使い捨てマスクと手袋着用は必須です。
処理後は流水・石鹸による手洗いを徹底して下さい。
次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200 ppm)でふき取り消毒して下さい。
2次感染防止のため1週間程度は消毒を徹底して下さい。
ふき取りの際は、家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。濃度を間違えると健康被害をきたすことがありますので、使用にあたっては「使用上の注意」を確認しましょう。
2次感染防止に関しては、症状の消失後も3〜7日間程度患者の便中にウイルスが排出されますので、油断せず感染対策を続けて下さい。
ノロウイルスに感染した際のおすすめの食べ物や、感染しやすい食べ物を教えて下さい。
感染したら脱水症状を防ぐために水分補給を行うことが大切です。食欲がなければ無理に食べる必要はありません。胃腸になるべく負担がかからない消化に良い以下のような食べ物がおすすめです。お粥
煮込みうどん
味噌汁・野菜スープ
具は柔らかく煮た大根・キャベツなどがおすすめです。大根にはアミラーゼという消化酵素が含まれており、キャベツには胃の粘膜を修復するビタミンUが含まれています。
また、感染しやすい代表的な食べ物として、牡蠣などウイルスを含む2枚貝があげられます。生食や加熱せずに食べた場合に起こりやすいので、体調が万全でない時はなるべく控えましょう。十分に加熱して召し上がることをおすすめします。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
2枚貝などノロウイルス汚染の可能性がある食品の場合、ウイルスを不活化させるためには食品の中心部を85~90℃で90秒以上の加熱をすることが必要です。調理台や調理器具も使用後すばやく洗い熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱消毒が有効ですので是非、食品からの感染を防ぐためにいつも清潔に保っていきましょう。
編集部まとめ

ノロウイルスは目に見えない大きさですが非常に強い感染力を持っています。乾燥している環境は空気中に舞いやすく、特に冬場は乾燥対策が必要です。
同居しているご家族がいる場合も、洗濯物は分けたり衣類やドアノブも次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200 ppm)でしっかり消毒したりと感染者が増えないようにしていきましょう。
参考文献
ノロウイルス(農林水産省)
ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)
ノロウイルス感染症とは(国立感染症研究所)

