脂肪腫は体のどの部分にもできる脂肪組織からなる良性腫瘍です。柔らかな腫瘍でほとんど痛みが無いのが特徴です。
あらゆる部位で発症するため、突然できた腫瘍が気になっているという人も多いでしょう。
そこで今回は脂肪腫の原因や特徴、悪性との見分け方などについて解説します。
何科に受診すべきか、また手術についてや放置することのリスクも紹介しています。参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「脂肪腫」を発症しやすい人の特徴・良性と悪性の見分け方はご存知ですか?』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
脂肪腫の再発とリスク

脂肪腫は再発しますか?
脂肪腫は手術でしっかりと取り除いた場合にはほとんど再発することはありません。ただ、体質的に脂肪腫ができやすい人は違う部位に同じような脂肪腫を発症することがあります。遺伝がかかわっているときも同様に脂肪腫を再度発症することもありますが、再発は稀であると考えてよいでしょう。
自然治癒することもあるのでしょうか?
脂肪腫が自然治癒することはありません。小さくなって治ったといわれる人がいますが、その場合は脂肪腫ではなく別のできものの可能性があります。脂肪腫は自然に治ることは無いので治療としては手術で取り除く以外はありません。
脂肪腫を放置するリスクを教えてください。
脂肪腫は良性の腫瘍のため放置することで命にかかわったり、悪性に移行したりするリスクはほとんどありません。ただ放置することで脂肪腫が少しずつ大きくなり、大きくなると小さな腫瘍を取り除くよりも手術に時間がかかる可能性が高くなります。局所麻酔で済むところが全身麻酔が必要になったり、入院が必要になったりということが考えられます。
また脂肪腫と診断されていないのに放置してしまい、検査で悪性の腫瘍が発見されても早期発見には至らなかったという場合もあるのです。
気になるしこりがあるときには放置せず、早めに受診して診断を仰いでください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
脂肪腫は体の脂肪細胞のある部位にできる良性の腫瘍で、比較的多くみられる疾病です。小さな脂肪腫の場合はあまり気にならないため放置しがちですが、稀に悪性の場合もあるのでできれば早めに受診して診断を受けるようにしてください。脂肪腫と診断された場合には、そのまま様子を見ることもあります。ただ脂肪腫は自然に治癒することもなく、薬などで治療することもできず手術で取り除く治療となります。その場合にも小さい脂肪腫の方が取り除きやすいことが多いのです。
しこりを見つけたら自己判断せずに専門医に相談してください。
編集部まとめ

脂肪腫について解説しました。脂肪細胞のある場所ならどこにでも発症する脂肪腫は良性の腫瘍です。
小さなうちはさほど気にならないため放置してしまいがちですが、急激に大きくなった・触ると痛いなどの症状があるときは別の病気の可能性もあります。
稀ではあっても悪性の腫瘍だったということもあるのです。また脂肪腫に似た症状の病気もあります。
脂肪腫そのものは怖い病気ではありませんが、気がかりな点があるなら早めに形成外科や皮膚科への受診をおすすめします。
参考文献
「軟部腫瘍」(日本整形外科学会)

