夫・健におつぼねパート・鈴木さんについて相談したさゆりは、勇気を振り絞って本社の人権・ハラスメント相談窓口へ相談することに。その結果、パート先の環境は大きく変化して…?
夫に相談して見えた可能性
あの夜、私は意を決して、リビングでくつろいでいた夫の健に、職場の全てを話した。
「…もう我慢できない。またおつぼねのせいで、真面目な社員の子がまた1人辞めていったの。店長たちに言っても無駄なのはわかってる。どうしたらいいか、もう分からないよ」
私は感情を抑えきれず、涙声になっていた。健は静かに私の話を聞き終えると、落ち着いた声でこう言った。
「さゆりも見ていてつらいよな。エリアマネージャーに言うのもいいけど、1つ、別の方法があるかもしれないぞ」
健は落ち着いた声で言った。
「別の方法?」
「うん。会社って、外部に公開してる窓口とは別に、社内の相談窓口があるんじゃないか?たとえば、コンプライアンスとか、ハラスメントの専門部署。そういうところに相談すれば、店長とか地域社員のレベルを飛び越えて、本社が直接動いてくれる可能性がある」
私はハッとした。確かに、研修でそんな話を聞いたような気がする。現場の人間関係に配慮せず、事実だけを調査するための、匿名性も保証された窓口…。私はすぐにパートを始めるときにもらった資料を読み返した。そこには、匿名の相談窓口についての記載がちゃんとあった。
事実を伝えることができた
私は次の日、思いきってその窓口に電話をかけた。手が震え、心臓がバクバク鳴っていた。途中で泣き出してしまうかもしれないと思った。
「…あの、パワハラについて、ご相談したいのですが」
私の消え入りそうな声に、電話の向こうの相談員は嫌な感じはせず、むしろ驚くほど優しく対応してくれた。
「はい、ありがとうございます。ご心境お察しします。誰にも言えず、お辛かったですね。詳しく状況をお聞かせいただけますか」
私は、辞めていった社員のこと、おつぼねの常日頃の言動、私がおつぼねと衝突した経験、そして店長や地域社員が無力であることを、全て洗いざらい話した。相談員は、私の話を遮ることなく、すべてを真摯に記録してくれた。最後に「必ず匿名性は守ります。事実確認のために内部調査に入りますので、ご協力ありがとうございました」と言われ、私は深く安堵した。

