声をあげる勇気
それから数日後。出勤した私は、すぐに異変に気づいた。おつぼねの姿がないのだ。休憩中、同僚の恵美が興奮した様子で私に耳打ちしてきた。
「さゆりさん!聞いた?おつぼね、本社の特別研修になったらしいよ!なんでも、急に内部調査が入ってパワハラがバレたみたい」
私は、胸の奥でガッツポーズをした。私の通報で、会社が動いてくれたのだ。その後の展開は、まさにドラマのようだった。
そして、プライドがエベレスト級に高いおつぼねにとって、自分が「パワハラ加害者」として認定され、店から離れて本社の研修を受けるというのは、耐えがたい屈辱だったらしい。研修の途中で自主的に退職したという。
夜、健にその報告をしたら、健は自分のことのように喜んでくれた。
「あの時、健が社内窓口のことを教えてくれなかったら、私はずっと諦めていたと思う。権力って、悪く使えばおつぼねみたいに人を傷つけるけど、正しく使えば平穏をもたらすんだって分かったよ。本当にありがとう」
私の職場には、穏やかな時間が訪れた。新しく入ってきたメンバーも、笑顔で仕事に取り組んでいる。私も、もう誰かの顔色を窺うことなく、楽しく仕事が続けられている。この経験は、私にとって大きな自信となった。勇気を出して声を上げることの大切さを、身をもって知ったのだ。
あとがき:平穏の先にある成長
嵐が去った後、さゆりの職場には単なる「元の日常」ではなく、「より良い未来」が訪れます。彼女は、理不尽に立ち向かった経験を自信に変え、これからは自分が職場の「風通しを良くする存在」となるでしょう。
この結末は、パワハラを乗り越えたさゆりが、家庭だけでなく、職場においても人生の主導権を取り戻し、成長した姿を描いています。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

