映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』ウィーン美術史美術館の名画ブリューゲル《バベルの塔》を味わう

映画『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』(2016)

参照:『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』

ウィーン美術史美術館は、オーストリアの首都に位置し、ハプスブルク家の王家コレクションに由来します。約700年間ヨーロッパで権力を持った名門だけあり、ヨーロッパ三大美術館に数えられています。

カメラが大規模改装に密着し、芸術への愛、スタッフとしての誇り、伝統を守るという責任を胸に、プロフェッショナルたちが奮闘する姿を収めました。インタビューや音楽は一切ないため、本当に美術館の舞台裏へ紛れ込んでしまったように感じられるでしょう。

ウィーン美術史美術館は、芸術を愛する風土で育まれ、2026年に創立135周年を迎えます。今回はその「伝統」に注目し、同美術館の目玉、ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》を解説したいと思います。

《バベルの塔》を描いたピーテル・ブリューゲル

1024px-Wierix,_Johannes_(attributed_to)_-_Portrait_of_Pieter_Brueghel_(I)_-_1572_-_RP-P-1907-593_croppedヨハネス・ウィーリクス《ピーテル・ブリューゲル1世の肖像》(1582)/アムステルダム国立美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

ピーテル・ブリューゲルの生年月日は不確定で、1526年〜1530年と推測されています。この記事では参考文献に基づき、1526年と仮定しました。また、ネーデルラント(※)で生まれたとされていますが、出生地も不明です。
※ネーデルラント:現在のベルギー、オランダ、ルクセンブルクにまたがる地域。ブリューゲルが暮らしたアントワープとブリュッセルは、現在のベルギーに位置する。

ブリューゲルのアントワープ時代

1024px-Pieter_Bruegel_the_Elder_-_1554_-_Wooded_Landscape_with_a_Distant_View_toward_the_Seaピーテル・ブリューゲル《海の遠景を望む林間風景》(1554)/ハーバード大学フォッグ美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

1540年、ブリューゲルはピーテル・クック・ヴァン・アールストに弟子入りします。クックは、イタリアでルネサンス絵画を学んだ、ネーデルラントを代表するロマニストでした。神聖ローマ皇帝カール5世に宮廷画家として仕え、建築理論書の翻訳もする知識人だったそうです。

クックが亡くなった後、ピーテル・バルテンスの助手として、ブリューゲルはシント・ロンバウト大聖堂の祭壇画を手伝いました。26歳から28歳まではイタリアへ旅行し、古代ローマの遺跡やルネサンスの宮殿を見学したと考えられています。そこで見た景色が《バベルの塔》にも活かされたのでしょう。

1554年に帰国すると、大手版画出版業者のヒエロニムス・コックで下絵画家として活動します。彼によるアルプスの大風景画シリーズは大人気でした。版画は彼にとって、油彩画制作の「着想源」や「原動力」になっていたのではないか、と注目されています。

ブリューゲルのブリュッセル時代

1563年、ブリューゲルはクックの娘と結婚し、ブリュッセルへ移住します。彼を招聘したのは、アントワーヌ・ペルト・ド・グランヴェルという枢機卿(ローマ・カトリック教皇の最高顧問)でした。芸術家のパトロンとして有名だった枢機卿は、ブリューゲルを高く評価し、《エジプトへの逃避途上の風景》などを注文しました。

1024px-Pieter_Bruegel_der_Ältere_-_Landschaft_mit_der_Flucht_nach_Ägyptenピーテル・ブリューゲル《エジプトへの逃避途上の風景》(1562)/コートールド美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

しかし、パトロンとの関係は約8ヶ月で終了します。枢機卿が過酷な異端裁判を実施したことで、ネーデルラントの民衆から批判を集め、祖国への帰国を命じられたのです。

1565年以降、ブリューゲルは農民画や寓意画を多く制作するようになりました。例えば《怠け者の天国》では、身分や職業に関係なく、人間の貪食や怠惰を追求しています。足の生えたゆで卵、ナイフが刺さったまま走る豚の丸焼きなど、ユーモラスなモチーフを用いることで、多くの人間が夢見る「悦楽の世界」への落とし穴を描きました。

1024px-Pieter_Bruegel_d._Ä._(1525-1569)_-_Das_Schlaraffenland_-_8940_-_Bavarian_State_Painting_Collectionsピーテル・ブリューゲル《怠け者の天国》(1567)/アルテ・ピナコテーク, Public domain, via Wikimedia Commons.

配信元: イロハニアート

提供元

プロフィール画像

イロハニアート

最近よく耳にするアート。「興味はあるけれど、難しそう」と何となく敬遠していませんか?イロハニアートは、アートをもっと自由に、たくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディアです。現代アートから古美術まで、アートのイロハが分かる、そんなメディアを目指して日々コンテンツを更新しています。