頚椎椎間板ヘルニアなどの治療で用いられる、頚椎人工椎間板置換術。日本では比較的新しい治療法ですが、海外ではすでに長い歴史を持っており、研究データを見ると良好な成績が報告されています。頚椎人工椎間板置換術を受ける際の注意点について、品川志匠会病院の新村先生に教えてもらいました。

監修医師:
新村 学(品川志匠会病院)
神戸大学医学部卒業。東京大学医学部脳神経外科、NTT東日本関東病院、東京大学医学部附属病院、関西医科大学附属枚方病院(現・関西医科大学附属病院)、東京都立多摩総合医療センター、東京都立神経病院、JCHO東京新宿メディカルセンターなどを経て現職。日本専門医機構認定 脳神経外科専門医、日本脊髄外科学会 技術指導医、日本専門医機構認定 脊椎脊髄外科専門医、医学博士。
編集部
頚椎人工椎間板置換術は、誰でも受けることができるのでしょうか?
新村先生
いいえ。神経の圧迫が起きている位置や、頚椎の変形の程度などによって、なかには適応とならない患者さんもいます。症例によって異なるので、詳しくは医師に相談することをお勧めします。
編集部
頚椎椎間板ヘルニアの患者さんでも、受けられない人もいるのですね。
新村先生
はい。たとえば椎間板の変性が進んでおり、スペースが失われてしまっている方は難しい場合があります。また、もともと頚椎の可動性が少ない方も適応外となることがあります。そのほか、頚椎の不安定性が高い方は人工椎間板置換術ではなく、従来の前方固定術の方が適していることもあります。また、過去に頚椎の手術を受けたことがある方は、頚椎人工椎間板置換術を受けることができません。
編集部
そのほか、手術を考えるにあたって注意すべきことはありますか?
新村先生
日本ではまだ新しい手術のため、「どの医療機関でも行っているわけではない」ということにも注意が必要です。実施施設基準や実施医基準が定められており、その条件を満たした医療機関や医師でなければ手術をすることができません。もし手術を希望する場合には、医療機関の選択に注意する必要があります。
編集部
新しい手術ということですが、手術の成績が良いことは欧米で実証されているのですよね。
新村先生
はい。しかし、日本においては、まだ長期成績が出ておらず、術後10年や20年経過したあとの様子については、確認されていません。また、インプラントが生涯にわたって安全に使えるかどうかも、まだエビデンスがありません。確かに海外では優れた成績をおさめている術式ですが、手術を行うかどうか判断する際にはこれらの点についても慎重に検討する必要があると思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
新村先生
頚椎人工椎間板置換術は非常に優れた術式で、前方固定術のデメリットを克服するなど、今後症例数も多くなっていくことが見込まれています。その一方で、手術を行える医師や医療機関が限られているのが現状です。もしこの手術に興味がある場合には、医療機関のウェブサイトを確認したり、医師に直接尋ねたりしてみると良いでしょう。自分ではどうしても見つけられないという場合には、かかりつけ医に紹介してもらうのも良いかもしれません。
※この記事はMedical DOCにて<首や手の痛み・しびれがある人に朗報 新しい「頚椎人工椎間板置換術」はどんな治療?>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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