小学校受験ホラー③:我が子にバツがつくという現実
そして、3つ目。これが、私にとって最大にして、いちばんリアルなホラーです。それは、「我が子にバツがつく」というホラー。初めて「我が子」と呼べる存在を腕に抱いたとき、この世にこんなに愛おしいものがあるのかと心から思いました。
これまで、唯一無二の存在として、まさにオンリーワンのかけがえのない存在として大事に育ててきた我が子。それが、お受験で初めて自分の子に順位とかマルバツ、合否がつくんですよね。
その残酷さにはじめは耐えられないと思いました。唯一無二だった我が子が他人の子と比べられて、優劣をつけられるなんて。我が子の可能性にバツをつけられてしまうような気がして母親として、どうしても耐えられない。
でも一方でどこかでわかっているんですよね。この受験は子どものためというよりも、親の自己満足の受験に子どもを巻き込んでしまっている。
その負い目があるからこそ、余計に「バツをつけちゃいけない」と思ってしまう。この強烈な親の心理こそが、一つ目や二つ目のホラーをさらに増幅させていたのかもしれません。
私自身も冷静でいられなかったように、小学校受験というものには一度そのレールに乗ってしまった親の我を忘れさせてしまうところがあるなと、今になって感じます。
そして、ハワイで始まる家族のこれから
とまあ、大変なことも多かった小学校受験ですが、今振り返ってみると、親子で、家族で過ごした本当に濃密な時間だったなと思います。受験には、家族での体験を絵に描くような課題もありました。そのために果物狩りに行ったり、海や山に出かけたり。「受験のため」ではあったものの、あの時間の中でたくさんの思い出を作ることができました。あの時間は間違いなく、家族の宝物です。
我が家の場合、最終的にはふたりとも私立の小学校に入学しました。けれど、親が勝手に乗せたエスカレーターではないか。そう自問自答した時期もありました。
そして結局今回のハワイ移住(2025年10月、出向に伴い家族でハワイに引っ越しました)に伴い、エスカレーターに乗せたはずだった娘を日本の私立学校から退学させ、自らの手で降りるという大きな決断もしました。本当にこれが親としての責任の取り方として正しかったのかどうかというのは、今はまだわかりません。
でも、たとえ道を変えたとしても、娘が「自分の人生が楽しい道のりだった」と将来言ってもらえるよう、ハワイで新しい家族の景色を楽しみ、切り開いていきたいと思っています。
小学校受験という、あのネイビーに包まれた日々。あの頃は我を忘れて夢中に走っていたけれど、今はまったく違う風の中にいます。
ハワイの海を見ながら、あの日々の、全然違う結末や未来があるんだなと、そんなふうに思ったことを今日は振り返ってみました。
<文/大木優紀>
【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母

