ある日突然手や足にコブのような膨らみができてしまったら、悪い病気の可能性を考えて不安になってしまいますよね。
腫瘤が手首などの常に見える場所にできてしまったなら尚更気になってしまいます。
手首などの関節周辺にできる良性の腫瘤にガングリオンがありますが、どんな症状なのか・痛みの有無・悪性の腫瘍と見分け方など意外と知らない方は多いです。
そんな疑問にお答えするために今回はガングリオンとは一体何なのか、症状・原因・悪性との見分け方などを解説します。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
※この記事はメディカルドックにて『「ガングリオン」とは?原因・治療法・放置するとどうなるかについても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
ガングリオンとは?

ガングリオンとはどんな病気か教えてください。
ガングリオンとは、主に手首周辺にできる良性の腫瘤(しゅりゅう)で、見た目はコブのように感じることが多いでしょう。
大きさは米粒大〜ピンポン玉大くらいで、腫瘤の硬さは硬かったり柔らかかったりと腫瘤によってそれぞれです。
ガングリオンは主に関節の周辺や腱鞘のある場所に発症する腫瘤で、身体のあらゆる場所にできる可能性があります。
最も発症しやすい場所が手首の甲側で、ガングリオン全体の7割程度が手首の甲側に集中して発症しています。
手首の甲側以外にガングリオンが発生する場所は以下の通りです。
親指の延長線上にある手首の掌側
掌側の指の付け根(ばね指が生じる場所)
脚のくるぶし
脚の指
膝の半月板
脊椎の椎間板
めずらしい例になりますが骨や筋肉・神経に発症する事もあります。
何が原因で発症するのですか?
関節を包む関節包という組織や腱鞘の一部から茎が伸び、その先に風船のような袋状のガングリオン袋が形成されます。
そのガングリオン袋の中に関節液や滑液が溜まり、ゼリー状に濃縮されることによりガングリオンが発症します。
ただし何故ガングリオンができるのか、発症のメカニズムはまだ解明されていません。
手を使いすぎると腫瘤が大きくなることがありますが、手をよく使う人に多く発症するというわけではありません。
ガングリオンのほとんどが自然に発症するものですが、打撲や捻挫などの外傷が原因となるケースもごく稀にみられます。
ガングリオンにみられる症状を教えてください。
ガングリオンは良性の腫瘤で、無症状であることも珍しくありません。腫瘤ができた場所や大きさによっては神経を圧迫し、痺れや痛み・感覚の麻痺といった症状が出ることがあります。
特に脚のくるぶしにガングリオンができた場合には、歩けないほどの強い痛みを感じるケースがあります。
また、関節付近に大きめのガングリオンができた場合に感じるのが、関節を動かしづらいといった症状です。
痛みなどの症状が出てきて日常生活に支障をきたす場合は、ガングリオンを切除する治療が必要です。
手首周辺に発症することが多いため、痛み等の症状が出ていなくても見た目が気になってしまうという人もいます。
女性が多く発症するようですが何故ですか?
確かにガングリオンは20代~50代の比較的若い女性に多く発症しています。
しかし発症のメカニズムが解明されていないため、なぜ女性に多く発症するのかも分かっていません。
手首部分にできることが多いという特徴を持つガングリオンですが、手をよく動かす人が発症する可能性が高いということもありません。
ガングリオンは放置しても大丈夫ですか?
ガングリオンは良性の腫瘤です。発症したガングリオンが無症状で日常生活に支障のない場合は、そのまま経過観察としても問題ありません。
しかし痺れや強い痛み・感覚の麻痺などの症状があり、日常生活を送ることに困難を感じる場合には治療が必要になります。また、発症した場所によっては見た目が気になるという人もいるかもしれません。
見た目が気になって強いストレスを感じてしまうのであれば、痛みなどの症状が無くても治療することをおすすめします。
ガングリオンの悪性の見分け方は?
ガングリオンは良性の腫瘤で、悪性のものはありません。ただし発症したものがガングリオンではなく、他の悪性腫瘍であることも考えられます。
その場合は素人が見た目や症状で判断することは難しいため、医師の診断が必要になります。
ガングリオンを疑うようなコブ状のものができたら速やかに整形外科を受診してください。
編集部まとめ

ガングリオンは良性の腫瘤のため、命に危険を及ぼすものではありません。
しかし他の悪性の病気と見分けるためにも、手首や身体の関節周辺に気になるコブができたら早めに整形外科を受診してください。
また、ガングリオンを治療しても再発の可能性が残ります。
そのため、痛みなどの症状がない場合は治療しないということも選択肢のひとつです。医師と相談しながら、上手に付き合っていきましょう。
参考文献
症状・病気をしらべる|日本整形外科学会

