●高齢者に対する契約における「配慮義務」とは
事業者は、消費者契約法上、消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供する努力義務を負っています(3条1項2号)。
近年では、加齢による認知機能や判断力の変化、デジタルリテラシーの低さといった高齢者の特性を考慮すれば、事業者側の説明や確認のレベルは、一般的な成人相手よりも高く設定されるべきだという議論がなされています。
平易な言葉で説明する、理解の確認を丁寧に行う、といった配慮が強く求められます。 もし、事業者がこのような配慮義務を怠った結果、親が不利益な契約を結んでしまった場合、事業者の責任が問われ、契約の取消しや損害賠償請求が可能となる可能性が高まります。
●具体的な対応策
このような場合にすべきこととしては、以下の点が挙げられます。
契約・課金の状況把握と証拠収集: そもそも親がどのような契約を結んでいるのか把握するのも大変です。 親のクレジットカードや銀行口座の明細、スマートフォンの請求書などを確認し、どのサービスからいつから課金が発生しているのかを調べなければなりません。 契約時の資料やメール、事業者とのやり取りを探すことが必要です。
消費者ホットラインへの相談: サブスクの解約手続きが困難であったり、不当な勧誘が疑われる場合は、全国共通の「消費者ホットライン(188)」に相談するのが一般的です。 消費者センターが法的な助言や、事業者との交渉サポートを行ってくれる場合があります。
内容証明郵便による解約通知: 事業者が解約に応じない、または解約手続きが複雑すぎる場合は、内容証明郵便で、契約の無効(意思能力が欠けると主張する場合)または取消し(契約締結の過程が不当であった場合)を主張する書面を事業者へ送付することが考えられます。 専門的な知識も必要になってくるため、弁護士に相談した方が良いケースもあるでしょう。
成年後見制度の検討: 親の意思能力の低下が深刻で、契約の整理や財産管理が困難な場合は、家庭裁判所への成年後見制度の申し立てを検討します。これにより、選任された後見人が法的に有効に不要な契約を解約できるようになります。 申立ては自分でもできますが、複雑な部分もあるため司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
(弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士/小倉匡洋)

