
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、アニメ制作を行う“スタジオななほし”による作品『子猫の配達員うーにゃん』だ。
同シリーズは、生後間もない子猫のうーにゃんが配達員の猫・シルバに助けられ、そこからシルバや仲間とともに配達員として働く姿が描かれた作品。また、スタジオななほしの代表・佐藤こーだいさんが制作を担当するアニメ版、木川田ともみさんが作画を担当する漫画版の2種類が展開されている。
そして、以前こーだいさんのX(旧Twitter)に、うーにゃんが絵描きのキャバリアさんと出会うエピソード「今日のお客さんは悩める絵描きのキャバリアさん」がポストされると、4500以上の「いいね」を獲得。そこでアニメ制作担当のこーだいさんと漫画担当の木川田さんに、『子猫の配達員うーにゃん』について話を伺った。
■配達員なのに届け物のドーナッツを食べようとするうーにゃん

遠くまで配達にやってきて「つかれた」「もうあるけないよ」と泣きながら弱音を吐いていたうーにゃん。お魚型のAIナビゲーターのカルパが「あと少し 頑張りましょうよ」と励ますも、うーにゃんはお腹が空いたため、配達中のドーナッツを食べようとする。
すると、「あのお」と声をかけてきたのは配達先の住人であるキャバリアさん。さらに「全然来ないから迎えに来ちゃったよ」「……キミ 食べようとしてなかった?」と続け、図星だったうーにゃんは慌ててドーナッツを手渡し…。
読者からは「ぐずるうーにゃんが可愛すぎる」「キャバリアさんの落ち着きが心地よい」などの声が相次いでいた。
■コロナ禍を経て誕生した温もりを与えてくれる「子猫の配達員うーにゃん」

――『子猫の配達員うーにゃん』は漫画だけでなくアニメも制作されている作品ですが、そもそもの始まりはどのような経緯だったのでしょうか?
木川田:2021年のコロナ禍の頃、デリバリーを利用する人が増えているのを見て、配達のお仕事をする子猫というアイデアが浮かびました。
私が住んでいるのは昔ながらの商店街で、息子が小さい頃、おつかいに行って褒められて嬉しそうに帰ってくる姿がすごく印象に残っています。人に愛されながら少しずつ成長していく、そんな子を描きたいという気持ちが、うーにゃんの始まりでした。
こーだい:木川田の描くうーにゃんの世界は、社会の問題を描くというよりも、誰かを思う優しさや、まっすぐにがんばる気持ちが中心にありました。その温かさに触れて、純粋にいい作品だなと感じたんです。原稿を読んだ瞬間に、この世界をアニメで表現したいと心に決めました。
――『今日のお客さんは悩める絵描きのキャバリアさん』を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
木川田:うーにゃんとキャバリアさんの心の距離が少しずつ近づいていく過程を大切に描きました。絵がうまく描けず落ち込んでいたキャバリアさんが、うーにゃんのまっすぐな言葉や笑顔に触れることで、少しずつ前を向いていく…その静かな心の変化を、セリフだけでなく秋の夕暮れの空気や光のトーンでも表現しています。
また、うーにゃんをただ可愛いキャラクターとしてではなく、小さな体で誰かを元気づける存在として自然に描けるよう心がけました。
――こーだいさんはアニメ制作を担当されているとのことですが、どのような工程で映像を手がけているのでしょうか?
こーだい:制作したのは約7分の短編アニメになります。まずは、「はじめてのおつかい」というコンセプトを軸に、原作には描かれていなかった「うーにゃんがはじめて街にやって来たときの物語」に決まるまで結構時間がかかりました。方向性が決まれば、脚本を起こし、絵コンテを描き、キャラクターをモデリングして、アニメーションさせていく、という流れで制作を進めています。
使用しているのは「Moho」というアニメーションソフトです。切り絵のように描いた絵をパーツごとに分けて動かせるのですが、どこまで立体的に動かせるか、どうすれば温かみのある映像にできるかを何度も試行錯誤しました。
一般的な日本のアニメは“リミテッドアニメーション”と呼ばれる省略された動きが多いのですが、うーにゃんでは、絵本のようにやわらかく、できるだけ“フルアニメーション”に近い動きを目指しています。
キャラクターのふわふわした質感や、光の入れ方ひとつにもこだわり、どのカットを切り取っても魅力的に見えるよう意識して制作しました。結果として、「3Dではないのに立体的に見える」「絵本がそのまま動き出したようだ」と言われる、うーにゃんならではの表現にたどり着くことができたと思います。
――作中には数々の可愛らしいキャラが登場しますが、描く際に意識しているポイントはあるでしょうか?また、どのような流れで考え、ビジュアルが決まるのでしょうか?
木川田:キャラクターを考えるときは、まず「この子はどんな日常を過ごしているんだろう?」と想像するところから始めます。たとえばキャバリアさんなら、秋の午後にアトリエで紅茶を飲みながら静かに絵を描いている姿が浮かびます。そうした暮らしの情景を先に思い描いてから、毛の色や服装、表情の雰囲気を決めていきます。
デザインでは、うーにゃんをはじめ全てのキャラクターにやさしさとぬくもりを感じられる形や色を意識しています。少し丸みを持たせたり、表情の中にユーモアを足したりして、見ていて安心できる世界を目指しています。
――読者へメッセージをお願いします。
木川田:このお話は、うーにゃんが配達を通して誰かの心に小さな光を届ける物語です。キャバリアさんのように、うまくいかなくて落ち込む日があっても、それでも毎日を続けていかなければならない。そんな時、うーにゃんのような完ぺきではないけど安心できる誰かが、ふっと心を軽くしてくれることがあると思います。この作品を通して、そうした穏やかな気持ちを感じてもらえたら嬉しいです。読み終えたあと、ほんの少しでも前を向いて歩き出したくなるような作品になっていたら幸いです。
こーだい:応援してくださっている皆さま、本当にありがとうございます!この小さな子猫が、失敗しながらもまっすぐに誰かへ何かを届けていく姿に、一緒に見守ってくださる皆さまの存在に、僕自身もたくさん励まされています。
うーにゃんの配達の物語は、まだまだ続きます。現在、短編アニメの続編となるシリーズアニメの制作の準備を進めており、クラウドファンディングでご支援を募っております。リターンとして、「うーにゃんぬいぐるみ」も制作しています。どんな風にプロジェクトが進んでいるのか、ぜひWEBサイトをご覧いただけるとありがたいです。うーにゃんがお届けする優しさや想いが、画面の向こうで誰かの心に届いていますように。

