「腹膜播種は完治」する?完治が難しい理由と治療法を医師が解説!

「腹膜播種は完治」する?完治が難しい理由と治療法を医師が解説!

腹膜播種の完治を目指せる治療法とは

以上のように、腹膜播種の治療はがん種ごとに組み合わせが異なりますが、共通していえるのは複数の治療法を駆使しても完治できる例は限られるという現実です。腹膜播種そのものを完全に治せるケースはまれですが、一部の症例では集中的な治療により5年以上生存し事実上治癒した状態が得られることもあります。完治を目指せる可能性がある治療法やアプローチとして、以下のようなものが挙げられます。

細胞減少手術(減量手術)

腹膜に播種した病変を可能な限り外科的に切除する手術です。原発巣や転移巣を含めて肉眼的に腫瘍を取り切る(R0切除)ことを目標とします。大腸がんや卵巣がん、腹膜偽粘液腫では、この手術が長期生存に直結する重要なステップです。完全切除が達成された症例では、不完全切除の場合に比べ生存率が大幅に向上すると報告されています。

腹腔内温熱化学療法(HIPEC)

手術で腫瘍を切除した後、温めた抗がん剤溶液を腹腔内に循環させる治療です。残存する微小ながんに高濃度の薬剤を直接作用させ、熱による相乗効果で殺細胞効果を高めます。HIPECは大腸がん腹膜播種や腹膜偽粘液腫、卵巣がんに対して世界各国で試みられており、特に腹膜偽粘液腫では標準的に行われています。一方で、大腸がんでは大規模試験で有用性が明確でないなど議論が続いています。

腹腔内抗がん剤(IP療法)

腹腔内に留置したポートを通じて抗がん剤を反復注入する方法です。腹膜播種病変へ直接薬剤を届けられる利点があり、卵巣がんでは標準療法の一部として認識されています。胃がんでもパクリタキセルの腹腔内投与の研究が進み、一部に有望な結果が得られています。IP療法は全身療法と組み合わせることで腹膜内外の両方にアプローチでき、完治を目指す治療戦略の一環となりえます。ただし腹膜播種が高度な場合は実施困難なこともあり、適応は限られます。

集学的治療の組み合わせ

上記の手術+全身化学療法+腹腔内療法を組み合わせ、さらに分子標的薬や放射線療法など必要に応じ追加する集中的治療です。例えば、胃がんで腹膜播種がある場合に全身化学療法→腹膜播種縮小→胃切除+術中HIPECのように複数の治療を順次行う試みもあります。患者さんとがん種ごとにがんの性質や全身状態は異なるため、主治医と十分に相談し適切な治療の組み合わせを検討することが大切です。

まとめ

腹膜播種はがんが腹膜に散らばった進行状態です。近年、抗がん剤の進歩や外科的手技の向上により、生存期間の延長や症状緩和は以前より可能になってきました。胃がん・膵がん・大腸がん・卵巣がんなど各臓器ごとに適切な化学療法が開発され、場合によっては手術や腹腔内治療(HIPECや腹腔内投与)を組み合わせて積極的に治療することもあります。

特に腹膜偽粘液腫では手術+HIPECで完治しえることが明らかになっており、卵巣がんでも高度な腹膜播種を克服して長期寛解する例が見られます。エビデンスやガイドラインに基づき、主治医と相談しながら納得のいく治療方針を立てることが重要です。

配信元: Medical DOC

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