知らないはずの場所が、なぜかやさしい。
そもそも、スナックという文化は「紹介」があってこその世界だった。どこか敷居が高くて、入るには勇気が要る。
でもこの場所は違う。ジャンカラという看板があるだけで、安心感がある。お酒を頼まなくてもいい。ドリンクバーだって使える。「おごる」とか「口説く」とか、そんな儀式がなくても成り立つスナックなんて、ちょっと不思議で、でも心地いい。
しかも、料金はいつものカラオケと同じ。初めての人も、財布の心配なしに飛び込める。
スナックは、“夜の公園”だったのかもしれない
たとえば昔、公園のベンチで知らないおじさんに話しかけられて、なぜか少し話が弾んだ、みたいな夜があった。このカラオケ喫茶にも、あの時と似たような“夜の不思議な出会い”がある。
歌に合わせて手拍子をする人。ちょっと遠慮しながら、でも確実に居場所を見つけていく人。誰かの歌に笑い、誰かの話にうなずきながら、ちょっとずつ心がほぐれていく。
ここは「誰かの店」ではなく、たまたま集まった人たちでつくる、その瞬間の“場”なのだと思う。それって、もしかすると、スナックの本質なのかもしれない。


