胃がんになりやすい人の特徴
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染者
胃がんの発生に最も強く関連していると考えられているのが、「ヘリコバクター・ピロリ菌」の感染です。ピロリ菌が長期間胃の粘膜にすみつくことで、慢性的な炎症(慢性胃炎)が起こります。この状態が長く続くと、胃の粘膜が薄くやせてしまう「萎縮性胃炎」へと進行し、その一部から胃がんが発生するリスクが高まることがわかっています。
ピロリ菌に感染しているかどうかは、血液検査や呼気検査、便の検査などで調べることができます。もし感染が確認された場合は、抗菌薬などを1週間服用する「除菌治療」を受けることで、将来の胃がんリスクを大幅に下げることが期待できます。
塩分摂取量が多い人
食生活も胃がんのリスクに大きく関わっていると考えられています。特に、塩分の多い食事(塩辛、漬物、干物など)を長期間にわたって摂り続けることは、胃の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こすため、胃がんの発生リスクを高めることが指摘されています。一方で、胃がんになりにくい人の特徴は、塩分を控えめにし、野菜や果物を豊富に摂るバランスの取れた食生活を心がけていることです。野菜や果物に含まれるビタミンなどが、胃の粘膜を保護する働きを持つと考えられています。日頃から減塩を意識し、彩り豊かな食事を心がけることが大切です。
喫煙者
喫煙は、肺がんだけでなく胃がんのリスクも高めることが多くの研究で示されています。タバコの煙に含まれる多くの発がん性物質が、唾液と共に飲み込まれたり、血液中に吸収されたりして胃の粘膜に到達し、がん細胞の発生を促すためと考えられています。喫煙者は非喫煙者に比べて、胃がんになるリスクが男性で約2倍、女性でも有意に高くなると報告されているため、注意が必要です。胃がんの予防を考える上で、禁煙は非常に重要な要素です。ご自身の意思だけで禁煙することが難しい場合は、禁煙外来などで専門家のサポートを受けることも有効な選択肢となります。
アルコールの量が多い人
過度な飲酒も、胃がんのリスクを高める要因の一つです。特に、高濃度のアルコールを頻繁に飲む習慣は、直接的に胃の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こす可能性があります。また、アルコールそのものにも発がん性があると考えられています。もちろん、適度な飲酒が直ちに問題となるわけではありませんが、日常的に多くのアルコールを摂取する習慣がある方は注意が必要です。休肝日を設ける、飲む量を減らすなど、節度ある飲酒を心がけることが、胃の健康を守ることにつながります。
血縁者に胃がんの方がいる人
胃がんの中には、遺伝的な要因が関与していると考えられるものもあります。ご両親や兄弟姉妹など、血縁の近いご家族に胃がんになった方がいる場合、ご自身も胃がんになるリスクが一般の方より高くなる可能性があるため注意が必要です。これは、遺伝的な体質が似ていることや、同じような生活習慣(食生活など)を送っていることが影響していると考えられます。
ご家族に胃がんの既往歴がある方は、特に注意が必要です。そうでない方よりも若いうちから、そしてより定期的に胃がん検診(胃X線検査や胃内視鏡検査)を受けることが、早期発見のために強く推奨されます。
胃がんの予防法
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌
胃がんの予防において、現在最も効果的と考えられている方法の一つが、ヘリコバクター・ピロリ菌の検査を受け、陽性であれば除菌治療を行うことです。ピロリ菌の除菌に成功すると、胃の粘膜の炎症が改善し、新たな胃がんが発生するリスクを大きく下げることができると報告されています。除菌治療は、数種類の薬を1週間服用するだけで、成功することが多いです。特に、胃の粘膜の萎縮が進んでいない若い世代のうちに除菌する方が、より高い予防効果が期待できると考えられています。一度もピロリ菌の検査を受けたことがない方は、かかりつけ医や消化器内科で相談してみることをお勧めします。
塩分を控える
日々の食生活を見直すことも、胃がんの予防につながる重要なポイントです。具体的には、塩分の摂取量を控えることが第一に挙げられます。塩辛い食品を好んで食べる方は、少しずつ頻度や量を減らす工夫をしてみましょう。加工食品に含まれる塩分にも注意が必要です。
また、緑黄色野菜や果物を積極的に食事に取り入れることも推奨されています。これらに含まれるビタミンCやβ-カロテンなどには、がんの発生を抑制する効果が期待されています。特定の食品だけを食べるのではなく、様々な食品をバランス良く組み合わせ、彩り豊かな食卓を心がけることが大切です。
禁煙する
禁煙と、節度のある飲酒を心がけることも、胃がんのリスクを減らすために非常に重要です。喫煙は胃がんの確実なリスク要因であり、禁煙することでそのリスクを下げることができます。飲酒に関しても、飲む場合は適量を守り、休肝日を設けるなど、胃に負担をかけすぎないようにしましょう。
これらの生活習慣の改善は、胃がんだけでなく、他の多くのがんや生活習慣病の予防にもつながります。ご自身の健康的な未来のために、今日からできることから始めてみることが大切です。

