腎臓は体にとってとても大切な臓器のひとつですが、「腎盂腎炎(じんうじんえん)」という病気があるのをご存じでしょうか。
「腎臓」は体内の血液中の老廃物をろ過して余分な塩分とともに尿として排出してくれる役割を持つ臓器で、「腎盂(じんう)」は腎臓で作られた尿を尿管へと送る部分の名称です。
腎盂腎炎とは、尿路から細菌が入り込むことによって引き起こされる感染症のことで、腎臓や腎盂、さらには体全体にまでさまざまな症状が表れることがあります。
大切な腎臓や体を守るために、病気を引き起こす対策などについて詳しく解説いたします。
※この記事はメディカルドックにて『「腎盂腎炎 (じんうじんえん)」の症状・原因について詳しく解説します!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
工藤 孝文(工藤内科)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
腎盂腎炎にかかってしまったら

どこで、どんな検査ができますか?
病院の内科・腎臓内科・泌尿器科・感染症内科などを受診して検査しましょう。もし、腎盂腎炎にかかってしまったら、すみやかに病院で受診して、発熱・悪寒・ふるえなどをともなうツラい諸症状を早期に改善させることが大切です。
病院で行う検査は尿検査・血液検査・超音波(エコー)検査・腹部CT検査などです。
尿検査では、細菌がいるかどうかをまず調べ、細菌がいる場合は菌の種類と抗菌薬の種類を見極めます。血液検査では、血液に炎症が起きているかどうか・腎臓の機能が悪くなっているかどうか・合併症の有無などを調べます。また、超音波(エコー)検査・腹部CT検査では、尿路の妨げとなる尿管結石などの所見や腎臓の腫れや炎症が起きているかどうかなどを調べることが必要です。
どのような治療方法がありますか?
治療法は、主に抗菌薬による治療が有効で、抗菌薬は口から摂取する経口抗生物質や、点滴による抗生物質の投与という方法です。
軽傷の場合は経口抗生物質による治療と、十分な水分補給を行って尿量を増やし、細菌を体外に排出することですみやかな改善が見込めます。
一方、全身状態が悪い重症の場合は、入院をともなう抗菌薬の点滴治療と安静、さらに1~2週間程度の経過観察および再検査が必要となります。
治療期間はどのくらいでしょうか?
治療期間は、およそ1週間から2週間程度の抗菌薬の投与を行います。また、抗菌薬の投与が終了した後も一定期間、感染症状の再発を調べるために1~2週間おいて再度尿検査をすることも必要です。
腎盂腎炎は早期の治療であれば、長引かせることなく比較的短期間で快方に向かわせることができます。
しかし、これらの治療を行っても快方しない場合は、入院してさらに詳しく検査する必要があるかもしれません。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
腎盂腎炎は、適切な治療を行えば1~2週間ほどで快方に向かいますが、せっかく体が細菌に勝とうとしているときに中途半端に服薬などを中止すると病気がぶり返してしまう可能性があります。
症状が緩和されたからといってご自身の判断で治療をやめてしまうのは危険です。症状が収まってまたぶり返すという悪循環を繰り返すと、慢性化してしまう原因となるため注意しましょう。
たとえ症状がなくなったとしても医師から処方された抗菌薬は必ず最後まで飲み切るようにしてください。
編集部まとめ

腎盂腎炎は、細菌が尿路に入って膀胱や尿管などを逆行し、やがて感染症を引き起こす病気だということがわかりました。
予防するためには、尿意を我慢せずにこまめに排尿すること・陰部を清潔に保つこと・水分をとって尿量を増やし細菌と一緒に排尿することなどを心がけることが大切です。
腎盂腎炎には症状が急激に強く表れる「急性腎盂腎炎」と、ほとんど自覚症状がない「慢性腎盂腎炎」という2種類があり、症状の表れ方や感じ方には個人差があります。
軽症の場合は、1~2週間ほどの抗菌薬の投与と安静によって快方に向かいますが、重症化してしまうと、細菌が血流にのって全身に広がって敗血症性ショックや急性腎不全・多臓器不全など命にかかわることもあります。
抗菌薬の効果により症状が早期に緩和しても、自己判断で服薬や通院をやめてしまうと症状がぶり返してしまうことがあるため、十分注意してください。
もし、腎盂腎炎を疑う自覚症状や長く続く慢性的な不調があったら、すみやかに病院の腎臓内科・泌尿器科・感染症内科などを受診しましょう。
参考文献
腎臓の病気:腎盂腎炎|病気の治療|徳洲会グループ
腎盂腎炎について|メディカルノート
腎盂腎炎 (じんうじんえん)|済生会

