
Kさんは日常の中でたびたび不思議な体験をしているという。あるときは出かけたはずの母親が庭に立っていたり、またあるときはドアのカギもない自室をノックされたり。ごく普通の生活の中に忍び込む“違和感”が、読む者の背筋を冷たくなぞっていく。
pixivに投稿された佐藤さんの創作漫画「Kさんの不思議な話」は、そんなKさんの体験談をもとに、どれが現実の母なのかわからなくなるという静かな恐怖を描いた話題作だ。
■隙間への恐怖と髪を切られた体験




Kさんが語る不思議な体験は、日常の「隙間」に潜んでいる。彼が北陸に住んでいた頃、深夜になると部屋のどこかから子守歌が聞こえ始めた。気味が悪く音の発生源を探すと、棚の裏側だったという。
勇気を出して棚の隙間を覗き込んだ瞬間、風が吹き抜けるような音とともに、髪の先端が何かに切られた。この出来事以降も、誰かに見られているような感覚が続き、「それ以来、今でも隙間が怖い」とKさんは語っている。
■ドッペルゲンガーのような母の存在
シリーズ第2話では、Kさんが最も戸惑った「母の奇行」が描かれる。外出したはずの母親が庭に直立したまま佇んでおり、Kさんが不審に思っていた矢先、玄関のほうから「本物の母」が帰宅するという出来事があった。Kさんは、まるで二人の母が同時に存在しているかのような、現実のズレを体験したという。
作者の佐藤さんは、「自分の中に『こういうホラーが観たい』という感覚があるのですが、なかなか見かけない。だったら自分で描いてみようと思ったのがきっかけ」と、創作の動機を明かす。好きな作品には、初期の『リング』や『呪怨』といった王道のホラー映画を挙げ、これらの作品と同じように「読者があとで思い返してゾクゾクするような表現を意識して描いている」とのことだ。
今後は「もっといろいろな話を描く時間を確保したい。いつかプロになれるよう頑張りたい」と語っており、創作への意欲も強い。
シリーズのなかでも、第2話と第3話の展開は特に読者の反響が大きく、「ゾッとして鳥肌が立った」「不気味で不可解、でもとてもよかった」などのコメントが多数寄せられた。“静かな恐怖”を味わいたい読者はぜひ読んでほしい。
取材協力:佐藤
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