暮らすようになん度も訪れたい
生活と文化が混在する町

JR新青森駅から奥羽本線に揺られ、約40分。車窓から見える岩木山とリンゴ畑をぼんやりと眺めているうちに弘前駅へ到着しました。
ここは青森県弘前市。地域の暮らしや文化を見つめてきた澤田さんが、移住を決めた町です。
弘前は江戸時代に城下町として栄えた地。地名や地形にも城下町の名残があり、町を歩くだけで400年の歴史を感じることができます。文化財に指定された建築物やレトロモダンな建造物が多いのも特徴。澤田さんが魅了されたのも頷けます。

弘前駅から地下の遊歩道を抜けて5分ほど歩き、まずは澤田さん行きつけの老舗市場「虹のマート」へ。
「津軽の旬の食材が揃っているので行くだけで楽しい気持ちになれる」と澤田さん。市場内は平日でも大盛況。珍しい品種のリンゴを取り扱っていたり、筋子専門のお店があったり。おしゃれなコーヒーショップやスイーツショップまで! まさしくここは、弘前市民の台所。地元民が複数のお店をハシゴする姿に、この町の食文化の豊かさを感じます。

続いて訪れたのは、「弘前こぎん研究所」。「こぎん刺し」は、農民が冬の寒さをしのぐため、野良着に奇数の目で刺し子を施したことから始まった技法。澤田さんは、スタッフにお願いして工房を見学させてもらうこともあるのだそう。「地域によって模様が異なったり、模様ごとに意味があったりするんですよ」と教えてくれました。

職人の手仕事に触れることができるスポットと言えば、「CASAICO」も外せません。漆作家の葛西さんがセレクトした、津軽塗の“今”を感じられる作品が並ぶギャラリー兼体験工房で、澤田さんは移住してすぐに津軽塗を体験したそう。「津軽塗にはこんなに多彩なデザインの可能性があるのかと驚きました。地元の人にとっても、魅力を再発見できる新鮮な場所なのではないでしょうか」と澤田さん。

旅の締めくくりは、隠れ家的タップバー「ギャレスのアジト」へ。なんと1階の醸造所では、毎週2種類の新作ビールが誕生しているんだとか。噂を聞きつけ、澤田さんも移住してすぐに足を運んだそう。ビールの名前はほとんどが津軽弁。ビールのフレーバーやフードも青森尽くし。お店の人の軽快なトークも楽しく、つい長居したくなってしまう居心地のよい空間でした。
澤田さんを魅了する弘前は、暮らすような気持ちでなん度も訪れたくなる、温かな余韻を残してくれる町でした。ふらっと歩くだけで城下町らしい地名に気付いたり、通りすがりの人の津軽弁混じりの会話にわくわくしたり。400年以上の歴史が息づく町は、まだまだ知られざる魅力を秘めていそうです。

