●具体的な対応策
このような場合に考えられる対応策としては、生前にデジタル遺産へのアクセスを確保するための仕組みを整えておくことが一般的です。
1) プラットフォームの提供する「アカウント管理ツール」の設定
Googleの「アカウント無効化管理ツール」やAppleの「故人アカウント管理連絡先」といった機能を活用し、自身に一定期間アクセスがない場合に、指定した家族にデータを自動共有したり、iCloudデータへのアクセス権を付与したりする設定をしておくことが考えられます。
2)パスワード管理アプリの「緊急アクセス機能」の利用
近年、パスワードが必要なアプリが増えるにつれ、「1Password」や「Bitwarden」といったパスワード管理アプリが普及してきています。
これらのアプリには、緊急時(アカウントの非活動化や死亡時など)に、事前に指定した信頼できる人にパスワード情報を開示できる緊急アクセス機能や類似の仕組みがあります。
これらの機能を設定し、デジタル資産へのアクセス情報を特定の家族と共有できるようにすることが有効です。
3)デジタル資産リストとアクセス情報をまとめた文書の作成
最も基本的で確実な方法としては、ネット銀行や仮想通貨取引所、サブスクリプションサービスなどのデジタル資産の名称、ID、およびそれらの情報が保存されている場所(例:上記のパスワード管理アプリのマスターパスワード)を一覧にした文書を紙または安全な形で作成し、家族にその保管場所を伝えておくことも考えられます。
この場合は、文書の盗難・紛失を防ぐため、金庫などの安全な場所に保管し、家族以外には知られないよう管理する必要があります。
(弁護士ドットコムニュース・弁護士/小倉匡洋)

