「膵臓がん」になるリスクがある『膵嚢胞』をご存じですか? 放置するとどうなる?【医師解説】

「膵臓がん」になるリスクがある『膵嚢胞』をご存じですか? 放置するとどうなる?【医師解説】

膵嚢胞(すいのうほう)は膵臓にできる液体のたまった袋状の病変で、多くは良性ですが、中にはがんに進行するタイプもあります。放っておいていいのか、経過観察や治療が必要なのか、正しい理解が大切です。花田内科胃腸科医院の花田先生に詳しく教えてもらいました。

花田 亮太

監修医師:
花田 亮太(花田内科胃腸科医院)

昭和大学(現・昭和医科大学)医学部卒業。川崎市立川崎病院初期研修医、川崎市立川崎病院総合内科、川崎市立川崎病院内科(現在、非常勤。週2回胆・膵内視鏡検査に従事)。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医、神奈川県内緩和ケア研修会修了、TNT(Total nutrition therapy)研修会修了、嚥下機能評価研修会修了、難病指定医。

膵嚢胞とは? 良性? がん化のリスクもある?

膵嚢胞とは? 良性? がん化のリスクもある?

編集部

膵嚢胞とはどんな疾患ですか?

花田先生

膵嚢胞とは、膵臓にできる液体のたまり(袋状の病変)のことをいいます。大きさは数mmから10cm以上と幅広く、ひとつだけ見つかる場合もあれば、複数見つかることもあります。その多くは良性ですが、種類によっては将来がん化する可能性のあるものも含まれます。膵嚢胞は多くが症状を伴わず、人間ドックや健康診断などの腹部エコー、CTやMRI検査などで偶然見つかることが多いとされています。

編集部

「がん」になるものもあるのですね。

花田先生

膵嚢胞にはさまざまな種類があります。その多くは良性ですが、中には長い年月をかけてがんに進展する可能性をもつものもあります。その代表が「IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)」と言われるタイプです。膵嚢胞の中では比較的よくみられるタイプで、多くは良性のまま経過しますが、一部では時間の経過とともにがん化することがあります。さらに、IPMNがある人は、嚢胞そのものががんになるだけでなく、膵臓のほかの場所にもがんができやすいことが知られています。一方で、膵炎のあとにできる「仮性膵嚢胞」のように、がんとは関係のない良性のものもあります。

編集部

膵嚢胞の種類、良性と悪性はどのように判断されるのですか?

花田先生

MRIやCT、超音波内視鏡などの画像検査で嚢胞の性質を詳しく調べることが基本です。さらに、年齢や性別、家族歴、これまでの病歴(膵炎や糖尿病など)といった背景因子も、嚢胞の種類を診断するうえで欠かせない情報です。

編集部

膵嚢胞はすぐにがん化するのですか?

花田先生

いいえ。がん化の可能性がある膵嚢胞でも、すぐにがんになるわけではありません。実際には、数年から十数年という長い経過の中で、少しずつがんの発生のリスクが高まっていくと考えられています。

膵嚢胞の原因は? 症状は?

膵嚢胞の原因は? 症状は?

編集部

膵嚢胞はなぜできるのですか?

花田先生

膵嚢胞の原因は、その種類によって異なります。たとえば「仮性膵嚢胞」と呼ばれるタイプは、膵臓の炎症に伴ってできます。一方で、炎症とは関係なく自然に発生する嚢胞もあります。検診や人間ドックで見つかる膵嚢胞の多くはこのタイプです。こうした嚢胞は加齢に伴って発生することがあったり、体質や遺伝的な要因が関係していたりする場合もあります。中には、長い年月をかけてがんに進展する可能性をもつものも含まれるため注意が必要です。

編集部

どんな人がなりやすいのですか?

花田先生

膵嚢胞の種類によって、「なりやすい人」の特徴は異なります。たとえば、IPMNは中高年の男性に多くみられます。一方で、MCN(粘液性嚢胞性腫瘍)と言われるタイプは、中年の女性に多いことが知られており、IPMNと同様にがんに進展するリスクがあります。また、糖尿病や肥満のある人、家族に膵臓がんの人がいる場合は、膵臓がんそのものができやすいと考えられており、膵嚢胞が見つかった際には「がんが隠れていないかどうか」を慎重に確認することが大切です。

編集部

どのような症状が見られますか?

花田先生

膵嚢胞の多くは、自覚症状はありません。ただし、嚢胞が大きくなったり、あるいはがん化して進行したりすると、お腹の違和感や痛み、背中の痛みを感じることがあります。まれに、膵臓の中を通る胆管や膵管を圧迫し、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、肝機能の異常、食欲低下などを引き起こすこともあります。

編集部

嚢胞を放置するとどうなるのですか?

花田先生

膵嚢胞の中には、時間の経過とともにがんに進展する可能性があるタイプもあるため注意が必要です。ただし、すべての膵嚢胞ががんになるわけではありません。リスクが高い嚢胞をしっかり見極め、適切なタイミングで定期的に検査を続けることが大切です。膵臓がんは症状が出たときには進行していることが多く、治療が難しいがんのひとつです。しかし、早期に発見できれば治療成績は大きく改善することもわかっています。

配信元: Medical DOC

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