乳がん骨転移の治療法

乳がんの骨転移の治療は、大きく分けて乳がんそのものに対する治療(全身療法)と、骨病変に対する治療(局所療法)の2本柱で行われます。これらを組み合わせることで、がんの進行を抑え、骨関連事象(SRE:病的骨折、脊髄圧迫、高カルシウム血症など)を予防し、痛みを緩和してQOLを維持することを目指します。5)
乳がんの治療
骨転移がある場合、乳がん細胞は全身に広がっている可能性があるため、全身に作用する治療が中心となります。4)
ホルモン療法
ホルモン受容体陽性の乳がんの場合に選択されます。がん細胞の増殖を促すホルモンの働きを抑える薬を使用します。ほかの治療と比較すると副作用が少なく、長期にわたって使用できることが多いです。
化学療法(抗がん剤治療)
ホルモン療法が効かない場合や、進行が速い場合などに選択されます。がん細胞を直接攻撃する薬を使用します。
分子標的治療
特定のがん細胞の増殖に関わる分子を標的とする薬です。HER2陽性乳がんや、特定の遺伝子変異を持つ乳がんなどで効果が期待されます。
免疫療法
免疫チェックポイント阻害薬など、患者さん自身の免疫力を高めてがんを攻撃させる治療法です。一部の乳がんで効果が期待されています。
これらの全身療法は、がん細胞の増殖を抑え、骨転移の進行を遅らせることを目的とします。
骨に対する治療
骨転移による痛みや骨折のリスクを軽減し、QOLを改善するために、骨病変に直接作用する治療が行われます。5)
放射線治療
骨転移による痛みの緩和に大変効果的です。また、骨折のリスクが高い部位に対して、骨を強化する目的で行われることもあります。
手術
病的骨折が起こった場合や、骨折のリスクが高い場合、脊髄圧迫による神経症状がある場合などに、骨の安定化や神経圧迫の解除を目的として行われます。
骨修飾薬(骨吸収抑制薬)
骨の破壊を抑える薬で、ビスホスホネート製剤やデノスマブなどが用いられます。骨関連事象(SRE)の発生を抑制し、痛みを軽減する効果があります。定期的な点滴や注射で投与されます。
鎮痛薬
痛みの程度に応じて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、医療用麻薬など、さまざまな種類の鎮痛薬が用いられます。
これらの治療法は、患者さんの状態、がんのサブタイプ、転移の状況、これまでの治療歴などを総合的に判断し、主治医と相談しながら決定されます。
乳がんが骨転移した場合の注意点

乳がんの骨転移と診断された場合、日常生活でいくつかの注意点があります。
痛みの管理
痛みを我慢せず、主治医や緩和ケアチームに積極的に相談し、適切な鎮痛薬を使用しましょう。痛みはQOLを著しく低下させます。
転倒予防
骨が脆くなっているため、転倒による病的骨折のリスクが高まります。室内環境の整備(段差解消、手すり設置など)や、適切な靴の選択、必要に応じて杖や歩行器の使用を検討しましょう。

