すぐに病院へ行くべき「朝に胃が気持ち悪い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
朝に胃が気持ち悪く便に血が混じる場合は、消化器内科へ
血が混じった便や黒い便が出た場合、消化器から出血している可能性が考えられます。出血が多いと、吐血(血液を嘔吐する)することもあります。気持ち悪さなど胃の不調とともに出血がある場合には、胃や十二指腸に潰瘍ができているかもしれません。潰瘍とは、粘膜が剝がれてしまい、穴が開きそうな状態のことです。
このような症状があるときには、できるだけ早く消化器内科を受診しましょう。出血が多くふらつくなどある場合、強い腹痛を伴う場合には、ためらわずに救急車を呼んでください。
病院受診・予防の目安となる「朝に胃が気持ち悪い」ときのセルフチェック法
・寝起きに胃が気持ち悪いことが7日以上続く
・血が混じった便や黒い便が出た場合
・食欲がなくなる、体重が減る等
「朝に胃が気持ち悪い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「朝に胃が気持ち悪い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、症状の原因となる明らかな異常がないのにもかかわらず、慢性的に胃の気持ち悪さやみぞおちの痛みなどの症状が現れる病気です。なお、ディスペプシアとは医学用語の1つで、胃の痛みやもたれなど腹部の不快な症状を示します。
機能性ディスペプシアの原因は複雑で、さまざまな要因が組み合わさっていることも少なくありません。
・胃や十二指腸の運動がうまくいかない
・胃や十二指腸に知覚過敏が生じている
・心理的な要因や生育環境によるもの
・胃酸が胃や十二指腸を刺激している
・遺伝的要因によるもの
・感染性胃腸炎の回復後に生じるもの
・喫煙、不眠、食習慣の乱れなど生活習慣による影響
・消化管のバリア機能が障害されている
胃が気持ち悪いなど腹部の不快な症状が続くときには、睡眠、運動、食事といった生活習慣を見直してみましょう。具体的な対処法は、食事は腹八分目にする、脂質が多くカロリーの高い食事は避ける、禁煙するなどです。それでも症状が改善しない場合や、症状が強い場合には消化器内科を受診しましょう。機能性ディスペプシアと診断されると、飲み薬によって治療するのが一般的です。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は胃食道逆流症の1種で、食道の粘膜にただれ(食道炎)がある場合を示します。さらに、逆流性食道炎には自覚症状があるタイプと無症状のタイプが存在します。逆流性食道炎の自覚症状は、主に胃の中にある酸が食道へ逆流することによって生じるのです。たとえば、胸やけや呑酸(酸っぱい液体がこみ上げてくる感じ)、吐き気などの症状が現れます。
対処法には、暴飲暴食しない、就寝前3時間の食事は避けるなどがあります。腹部を締め付けない服装をする、前かがみの姿勢を避けるなど腹部を圧迫しないよう配慮することも大切です。
逆流性食道炎は命にかかわる病気ではないものの、生活の質に影響を及ぼします。不快な症状により、仕事がはかどらない、食事が楽しめない、ぐっすりと眠れないなど日常生活に支障がある場合には、消化器内科を受診しましょう。食事や生活を見直しても症状が改善しない場合には、胃酸の分泌を抑える薬を用いて治療します。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍は、十二指腸の壁を胃酸や消化酵素が深く傷つけることによって起こる病気です。なお、十二指腸とは小腸の一部で、胃に一番近い部分のことです。十二指腸はもともと胃酸に対する抵抗力が弱いため、胃酸の分泌が多くなりすぎると潰瘍が発症しやすくなります。
十二指腸潰瘍になると、みぞおちのあたりに鈍い痛みを感じたり、吐き気を催したりしやすいです。潰瘍部分から出血すると血液が混じった黒い便が出たり、吐血したりすることもあります。痛みや吐き気が続く場合、出血が見られる場合には早めに消化器内科を受診しましょう。
十二指腸潰瘍と診断されると、飲み薬による治療を行うのが一般的です。薬を飲み始めてからおおむね6〜8週間で潰瘍は治りますが、暴飲暴食を避ける、喫煙や飲酒を避けるなど生活習慣の改善にも努めましょう。
ストレス性胃炎
ストレス性胃炎は、ストレスが原因で胃に不調が生じる状態です。ストレスによる急性の胃炎と、機能性ディスペプシアといった2つのケースが考えられます。
急性胃炎は、ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、胃酸が過剰に分泌されたり、胃粘膜への血流が低下したりすることで胃に炎症が起こります。一方、機能性ディスペプシアは前述のとおり、胃に異常がないにもかかわらず胃炎のような症状が出ることもあるのです。
ストレスが原因で気持ち悪さや胃痛などの不調が出ているときには、ストレスの原因を取り除いたりリフレッシュしたりと、ストレスを軽減することが重要です。不調が続く場合には、消化器内科を受診なさってください。消化器に異常がなく、こころの問題が大きい場合には心療内科や精神科への相談を検討するとよいでしょう。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れた状態のことです。自律神経は胃腸の働きや消化液の分泌を調整しているため、バランスが崩れると気持ちが悪くなる、食欲が低下する、胃が痛くなるなどの症状が現れることもあります。
自律神経失調症の原因は特定しにくいですが、ストレスや生活習慣の乱れが影響しているケースも多く見受けられます。そのため、ストレスとうまく付き合ったり、生活習慣を見直したりすることで症状が軽くなることもあるでしょう。症状がつらいときには、消化器内科や心療内科を受診しましょう。
自律神経失調症の治療には、2つのパターンがあります。1つ目は、症状を抑えるための対処療法です。吐き気がある場合には、吐き気を抑える薬が処方されることもあります。2つ目はストレスや心理面へのアプローチです。不安の症状が強いときには抗不安薬が処方されたり、専門医による精神療法が進められたりすることもあります。

