血糖値が低くなる原因
血糖値が逆に低くなってしまうと、身体にさまざまな不調が現れます。例えば、汗がよく出る、不安になる、脈が速くなる、手や指が震えるといったものです。こうした低血糖症状がある場合や、低血糖症状の有無にかかわらず血糖値が70mg/dLより低い場合には低血糖と診断されます。ここでは、血糖値が低くなってしまう原因を解説します。
糖尿病の治療薬の影響
低血糖症状は、特に糖尿病の治療中の方にみられることが多い状態です。
糖尿病の治療に使われる薬の中には、低血糖を引き起こす副作用があるものがあります。食事量、特に炭水化物の不足や、食事時間の遅れ、空腹時の運動、薬剤の量が多かったことなどが、低血糖の引き金になります。
血糖値が50㎎/dL未満になると、意識がもうろうとしてしまうなど、非常に危険な状態になることもあります。できるだけ早く、ブドウ糖を口にするなどの対応をとることが必要です。
インスリンの過剰分泌
糖尿病の薬の影響の他にも、低血糖は起こります。大きく分けると、空腹時に起こるものと食後に起こるものに分けられます。
空腹時の低血糖の原因の一つに、インスリンが大量に分泌されてしまう病気があります。例えば、膵臓にできるインスリノーマという病気は、インスリンを過剰に分泌するため、低血糖発作の原因となります。
コルチゾールの分泌不足
副腎という腎臓の上の方にある小さな臓器からは、血糖値を上げる働きを持つコルチゾールというホルモンが分泌されています。副腎の機能が低下してしまう副腎不全では、このホルモン分泌も低下し、結果として低血糖となる場合があります。
胃の切除後
食後の低血糖症状の原因の一つに、胃などの消化管手術後があります。後期ダンピング症候群とも言われており、日本では胃の切除後5〜10%にみられるとされています。腸に炭水化物が急速に流れ込むため、高血糖状態になります。すると、その状況に反応し、インスリンが大量に放出されるため、食後2〜3時間後に血糖値が下がります。そして、全身倦怠感や発汗、めまい、脱力感、失神などがみられます。
早期の糖尿病
食後に低血糖症状が出現する原因としては、前述の消化管手術後の他、早期糖尿病、特発性があります。早期糖尿病の場合、食後のインスリン分泌が過剰になってしまうため、食後の血糖値が下がってしまうという機序が考えられています。
一方で、糖尿病かどうかを調べる検査で問題がない方でも、食後に低血糖状態になり、脱力感や冷や汗が現れることもあります。これは特発性反応性低血糖と呼ばれる状態です。原因などについては、現在も研究が進められている段階です。
食後に低血糖症状が続くようであれば、一度内分泌内科を受診しましょう。
「血糖値の基準値」についてよくある質問
ここまで血糖値の基準値について紹介しました。ここでは「血糖値の基準値」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血糖値の正常範囲はどれくらいなのでしょうか?
木村 香菜 医師
血糖値の正常範囲は、空腹時血糖値99mg/dL以下、HbA1c5.5%以下となっています。
健康診断などで、この範囲を超えた値が出ている場合は、生活習慣改善と経過観察、場合によっては精密検査が必要となります。

