初めて連ドラで、ラストシーンを書き終えたくないと思った。『愛の、がっこう。』脚本・井上由美子インタビュー

初めて連ドラで、ラストシーンを書き終えたくないと思った。『愛の、がっこう。』脚本・井上由美子インタビュー

「小道具」にこだわった第6話の海デート

――全話で一番お気に入りの場面を一つ選ぶとしたら、どこでしょうか?

井上:
第6話です。デートを終える改札場面も美しいですが、私は砂浜でキスをする場面がグッときました。カヲルが「100人以上の女性とキスをしてきた。俺は汚れてるから先生にはキスをしない」とふざけまじりに言う。それなのにむしろ恋愛が奥手の愛実のほうからキスをしようとする。

それは未遂に終わりますが、すみませんと謝ったりする愛実にカヲルがやっぱりキスをする。あのキスに至るまでの一連の流れがとても好きですね。西谷監督の演出も含めて心に刺さる場面になったなと思います。

――第6話には気になる小道具があります。改札前で二人が交換する帽子です。SNSでも反響があった人気の場面ですが、二人のけじめの瞬間であり、ときめきがありつつ、ほろ苦い感じが絶妙でした。

井上:
そう簡単には気持ちを表現できない不器用な二人なので、今回は小道具に頑張ってもらおうと、あれこれ考えました。ペンや紙、本や日傘もそうです。中でも帽子は持ち主を強く表現するものだと思います。

ドラマ「愛の、がっこう。」第6話は改札の場面で帽子を交換することを先に決め、そこに向かって書きました。それにほんの少しラブコメ要素として、素敵な男性に帽子を選んでもらう帽子屋さんのシーンは女子の夢を込めています(笑)。

ラウール(Snow Man)は「別人になることを楽しめる人?」

――カヲルはお調子者キャラを演じるとき、よくダンスをします。海辺の場面では帽子をかぶっていることで振りがより鮮やかになり、ラウールさんの演技が生き生きしていました。木村さんとラウールさんの演技はどうでしたか?

井上:
お二人とも初めてご一緒する俳優さんですが、彼らが醸す空気感が抜群だと思いました。木村さんが脚本家役を演じたドラマ『伊藤くん A to E』(毎日放送、2017年)を見て以来、木村さんの演技に目を引かれ、出演作品を他にも拝見するようになりました。

木村さんの演技は、感情のリアクションやセリフを読む速度感が素晴らしい。脚本に書いていないことまで勘を働かせる才能があると思います。大人しい役でも、ここぞという場面で破壊力のある表情をするのが魅力です。普段は可愛い愛玩犬だけど実は強いチワワを思いついて、チワワ先生にしました。

ドラマ「愛の、がっこう。」――ラウールさんはどうでしたか?

井上:
人気アイドルグループSnow Manのメンバーであることはもちろん存じ上げていましたが、私が目を惹かれたのはパリコレの1本の動画です。たまたま「メゾン ミハラヤスヒロ」2025年春夏コレクションを見ていたら、ラウールさんが出ていて。それがちょっと奇妙というか、厚着なのに、おへそが出ていて、顔にはグルグルとテープか何かが貼りついていて、なのに顔は限りなく無表情(笑)。魔王のお散歩みたいだなと。インパクトがありました。

――ランウェイモデルとしても活躍するラウールさんを見てさらに興味を持った人は多いですよね。

井上:
国民的アイドルでありながら、存在感の出し入れができるのを見て、もしかしたら、別人になることを楽しめる方かもしれないなと思いました。

ちょうどフジテレビ制作の主演映画『赤羽骨子のボディガード』が公開直前だったので、スタッフに頼んで見せていただきました。とてもいい表情がたくさんあって。すぐに西谷監督に「見てください」と言いました。



配信元: 女子SPA!

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