今までの演技であまり見せてこなかった顔をどれだけご提供できるか
――第5話の書店場面で嬉しい瞬間があります。愛実はコナン・ドイルの『バスカヴィル家の犬』をカヲルにおすすめしますが、これは井上さんの脚本作『シャーロック アントールドストーリーズ』(フジテレビ系、2019年)への目配せですね。これも小道具の一つとして指定したのでしょうか?井上:『シャーロック』でもご一緒した西谷監督へのリスペクトを込めたものです。でもカヲルにいきなりコナン・ドイルの小説は読めませんよね……。カヲル、ごめんな、と言いたいです。
――本作で木村さんとラウールさんも、井上作品に出演することで新たな側面を打ち出すためのエネルギーを得たように感じます。俳優の演技を引き立たせるためにどのような工夫があるんですか?
井上:台本は、台になる本という意味です。なので、演出家と俳優が思い切り遊べる舞台を提供したいと思って書いています。何か一つでも、今までの演技で見せてこなかった顔を贈りたいですね。簡単ではないですが、それを目指すのが脚本家の仕事であり、俳優さんへの礼儀だと常に思っています。
――木村さんとラウールさんの新たな側面とオリジナル脚本で純愛ドラマの物語性がぴたりとハマっていると思います。
井上:ありがとうございます。涙が出るほど嬉しいお言葉です(笑)。
――愛実とカヲルの恋の結末が楽しみですが、最終回の見どころも含めて視聴者の皆さんに一言お願いします。
井上:連ドラの最終回を書き終えると、ホッと安心することが多いですが、今回は終わってほしくない、登場人物と離れがたいという思いが大きかったです。
そんな風に思いながらラストシーンを描いたのは初めてかもしれません。
最終回は愛実とカヲルがどこに行くのか。特に愛情を込めて描いたラストシーンを視聴者の方がどのように受け止めて下さるのか。愛実とカヲルが選ぶ結末を西谷監督がどのように完成してくれるのか。まだ私も見ていないのですが、とてもとても楽しみです。
<取材・文/加賀谷 健>
【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu

