
奈良県奈良市の郊外にある正暦寺は、県内でも人気の紅葉スポットです。秋には境内がモミジやイチョウの紅葉で、赤や黄色に染まります。少し山間にあるので、落ち着いた雰囲気も魅力です。直通バスも運行されるので、おでかけしてみませんか。
奈良市にある正暦寺

正暦寺(しょうりゃくじ)は、奈良市郊外の山間にある寺院です。992年(正暦3年)に、一条天皇の発願により、僧の兼俊(けんしゅん)が創建したといわれています。
かつては塔やお堂が立ち並ぶ大きな寺院でしたが、1180年(治承4年)の平重衡(たいらのしげひら)の南都焼き討ちの際に、火事が燃え移り、すべて焼けてしまいました。その後一時期再興されましたが、江戸時代以降に衰退し、現在では一部のお堂を残すだけとなっています。
静かになった正暦寺ですが、自然の豊かさや景観の美しさは変わっていません。特に秋の紅葉の鮮やかさは有名で、古くから「錦の里」と呼ばれ、現在でも多くの観光客が訪れています。
境内の紅葉を見よう

境内の紅葉を観賞してみましょう。正暦寺には、約3,000本のモミジがあるといわれており、いたるところで紅葉が楽しめます。紅葉と合わせ、正暦寺の文化財もゆっくりと見学してくださいね。
例年の見頃
正暦寺の紅葉の例年の見頃は、11月中旬から12月上旬頃とされています。その年の気候によって、見頃の時期はかなり変わることがありますので、お寺の公式サイトやSNSなどで確認してからお出かけするとよいでしょう。近年は秋も温暖なため、色づきはやや遅いようです。

筆者が訪れた11月中旬は、渓谷沿いや本堂周辺で真っ赤なモミジが見られましたが、全体的にはまだ色付いていない葉も半分近くあるように感じられました。
福寿院客殿からの紅葉

福寿院客殿は、駐車場から歩くとすぐに見える建物です。1681年に建て替えされた数寄屋風客殿建築で、国の重要文化財に指定されています。
こちらからは、山内を一望する借景庭園の景色が楽しめます。紅葉の季節には、真っ赤に染まるモミジが素晴らしく、縁側でしばらく眺めている人も見られます。
以前はこちらから写真の撮影もできたそうですが、現在は諸事情により建物内からの撮影は禁止されています。カメラやスマートフォンはいったんかばんなどにしまい、じっくりと観賞するのも良いのではないでしょうか。
本堂と周辺からの紅葉

福寿院客殿を出て、さらに坂道や階段を上ると、本堂、鐘楼が立っています。この本堂に行くまでの道にも真っ赤に色づいたモミジが見られます。

本堂周辺の平地は、龍神平と呼ばれており、こちらから山内の紅葉が一望できます。モミジだけでなく、イチョウの黄色い紅葉も楽しめるので、見ごたえがあります。鮮やかな紅葉を楽しんでください。
渓谷沿いの紅葉

正暦寺の前を流れる渓谷沿いも、紅葉が美しいです。時折聞こえる小鳥のさえずりとともに紅葉を楽しむと、心落ち着くひとときを過ごせるでしょう。

このように谷のそばまで降りることができる歩道もあります。紅葉は、駐車場から市街地方向に向かう車道からも見られますが、道幅が狭く、交通量も多いので注意が必要です。

渓谷沿いは大きくなったモミジも多く、見ごたえがあります。真っ赤に色付いた葉と、オレンジ色の葉のグラデーションも美しいものです。
売店・休憩処

紅葉の季節には、境内の駐車場のそばに売店がオープンします。加工品や柿を使った和菓子なども並ぶので、紅葉を観賞したあとに立ち寄ってみてください。

筆者が訪れた際には、コーヒー・抹茶も販売されていました。最寄りのカフェなどへは少し距離があるので、バスで訪れた人にはありがたいですね。テーブルも設置されているので、休憩しながらいただくことができます。
日本清酒発祥の地
正暦寺は、日本清酒発祥の地といわれています。室町時代には、現在の醸造法とさほど変わらないような高い技術で、酒造りを行っていたそうです。
現在では、当時のような大規模な酒造りは行っていませんが、毎月1回、日本酒醸造に欠かせない酒母(しゅぼ)の仕込みをしているそうです。県内の7つの蔵元では、この酒母を使って造った日本酒を、「菩提(ぼだい)もと清酒」として販売してますが、これをこちらの福寿院客殿でも買い求めることができます。
筆者も以前、菩提もと清酒をいただいたことがありますが、コクのある風味のなかに酸味が感じられる、独特の味わいでした。こちらのお土産として買って帰るのも良いかもしれませんね。
