食品スーパーに関する疑問や消費者が知らない裏側を、創業105年にあたる2017年に倒産した老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)の著者・小林久氏に解説してもらいます。今回のテーマは「スーパーのレジ袋、有料と無料の店の違い」。
(写真ACより)
レジ袋有料は、あくまで業界ぐるみの“紳士協定”
あなたがスーパーに行くとき、マイバッグを持参して「レジ袋」を辞退していますか? 2020年7月に全国で始まった「レジ袋有料化」も、すっかり暮らしに根付きましたね。
この本来の目的は、“プラスチックごみの削減”でしたが、「本当に効果があるの?」といった声は多く、根拠が乏しい部分もありました。スーパーでは「食品ロス軽減」や「トレー削減」も課題ですから、私たちが環境問題に関心をもつきっかけ作り、という意味合いのほうが大きかったのかもしれません。
そもそもレジ袋有料化は「プラスチック資源循環促進法」に基づく取り組み(法律)です。 とはいえ、違反しても厳しい罰則が科されるわけではなく、あくまで業界ぐるみの“紳士協定”のようなものでした。
しかし、スーパー各社は「ライバル店が“無料”を続ければ、お客さんがそちらに流れるかも?」という不安もあり、抜け駆け禁止とばかりに足並みをそろえて有料化の方向で進み、順調に広まっていきました。
大手チェーンにとって、レジ袋は億単位の「純利益」
一方で、レジ袋有料化は、スーパーにとって思わぬ“副産物”をもたらしました。
それまで経費として“出費”していたレジ袋のコストが、わずかでもお金を取ることで「利益商品」に変わったのです。2~3円で仕入れた袋を5~10円で販売すれば、その利益率は200%以上。しかも買ったお客さんは袋代の消費税まで支払います。年間で「数億枚」単位の袋を配る大手チェーンにとっては、まさに億単位の「純利益」が転がり込む“ボーナス特需”でした。
私もかつてスーパーを経営していましたが、国が動く12年も前、08年から山梨県全体でレジ袋有料化に取り組んだ経験があります。
利益が出てしまう構造でもあり、個人的には実施に反対でしたが、県主導のプロジェクトとしてほかのスーパーを説得して回ったことを覚えています。その結果、お客さまのレジ袋「辞退率」は、なんと80%にも達しました。しかし、心のどこかで「これって本当に環境のためだけなのか?」というモヤモヤが消えず、現在に至ります。
「レジ袋有料化」は、「レジ袋商品化」ということです。
“環境のためにご協力を”と呼びかけながら、売れば売れるほどスーパーに利益が発生する仕組み。もともと経費だったものが、突然「利益商品」に変わる……。経営者としてはありがたい半面、どこか後ろめたい気持ちにもなるのです。これを否定できるスーパーの社長はいないはずです。

