「全身性エリテマトーデス」になぜ気づけない? 診断が遅れる理由と検査の重要性

「全身性エリテマトーデス」になぜ気づけない? 診断が遅れる理由と検査の重要性

SLEは多臓器に症状が現れる複雑な自己免疫疾患であり、その診断には専門的な知識と複数の検査を要します。ここでは、病気の発症メカニズムと診断上の課題、代表的な検査項目について詳しく紹介します。

全身性エリテマトーデスの病態と診断の難しさ

全身性エリテマトーデスは、免疫系の制御異常によって自己組織を攻撃してしまう代表的な全身性自己免疫疾患です。自己免疫の破綻は、一度発症すると長期にわたって持続し、再燃と寛解を繰り返すことが特徴です。

自己免疫疾患としての特徴

全身性エリテマトーデスの病態形成には、抗核抗体をはじめとする多様な自己抗体の産生が深く関与しています。抗二本鎖DNA抗体(anti-dsDNA抗体)や抗Sm抗体と呼ばれる血液マーカーは、SLE特有の自己抗体で、診断や病気の活動状態を確認するのに役立ちます。これらの自己抗体は免疫複合体を形成し、血管壁や臓器組織に沈着して炎症反応を引き起こします。その結果、皮膚の紅斑、関節炎、腎炎(ループス腎炎)、心膜炎、間質性肺疾患、さらには中枢神経系の障害など、実に多彩な臓器障害が出現します。

この多臓器性こそが全身性エリテマトーデスの大きな特徴であり、同じ診断を受けても患者さんごとに臨床像は大きく異なります。関節痛や皮疹など比較的軽度な症状だったり、腎不全や痙攣発作など重篤な合併症が生命予後に直結する場合もあります。つまり、全身性エリテマトーデスは一人ひとりの病像が異なる病気であり、その不均一性が診断や治療を一層難しくしています。

診断における課題と検査方法

全身性エリテマトーデスの診断は単一の検査だけで確定できず、臨床症状と検査所見を総合的に評価する必要があります。米国リウマチ学会(ACR)や米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会共同基準(ACR/EULAR 2019分類基準)が国際的に用いられており、皮疹、関節炎、血液異常、腎障害など複数の所見を組み合わせることで診断が行われます。

検査の中心は血液学的評価です。抗核抗体はほぼ全例で陽性となる一方、抗dsDNA抗体や抗Sm抗体は疾患特異度が高いマーカーとして活用されます。さらに、補体(C3、C4)の低下は疾患活動性を反映する重要な指標です。炎症反応の把握には血沈やCRPが用いられ、血球減少の有無も重要な情報となります。

加えて、腎障害の有無を確認するための尿検査(蛋白尿・尿沈渣)は必須です。腎生検によって病理組織学的にループス腎炎のタイプを分類することもあり、治療方針決定に直結します。画像検査では、胸部X線や心エコー、CTにより胸膜炎や心膜炎、肺病変の評価が可能です。中枢神経症状が疑われる場合にはMRIや脳脊髄液検査が行われます。

このように全身性エリテマトーデスの診断は、臨床像と免疫学的検査を多角的に組み合わせることが求められ、総合診断が不可欠な疾患といえます。

まとめ

全身性エリテマトーデスは、自己免疫機能の異常により引き起こされる膠原病の一つで、厚生労働省により難病指定されている慢性疾患です。特に女性に多く見られ、倦怠感をはじめとする多様な症状により患者さんの生活に大きな影響を与えます。現在では生物学的製剤の登場により治療選択肢が拡大し、適切な治療により症状のコントロールが可能になってきています。患者さん一人ひとりの病態に応じた個別化医療の推進により、今後さらなる治療成績の向上が期待されます。

参考文献

[厚生労働省難病情報センター 全身性エリテマトーデス]

[日本リウマチ学会 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン]

桃原 茂樹

監修医師:
桃原 茂樹(草薙整形外科リウマチクリニック)

日本を代表する整形外科・リウマチ専門医であり、変形性関節症、リウマチ、変形性脊椎症、骨粗鬆症、痛風、偽痛風などの治療と研究に従事。これまでに慶應義塾大学特任教授、東京女子医科大学教授を歴任し、豊富な臨床経験と先進的な研究を基に、実地医療に加え国内外の医療教育や国際交流にも尽力。
【学歴】
慶應義塾大学 医学部卒
博士(医学)(慶應義塾大学)
米国Rush University Medical Center, Department of Biochemistry
日本・ヨーロッパ間リウマチ外科交流プログラム
【職歴】
1984年 慶應義塾大学医学部研修医(整形外科学)
1991年 慶應義塾大学医学部助手(整形外科学)
1993年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター助手
1997年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター講師
2005年 東京女子医科大学附属青山病院助教授
2008年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター教授
2008年 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター副所長
2016年 慶應義塾大学先進運動器疾患治療学講座特任教授
2025年 医療法人社団 博恵会理事長
【現在の学会・社会活動】
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会 リウマチ認定医
日本リウマチ学会 専門医・指導医・評議員
日本リウマチ外科学会 評議員
日本リウマチ学会 理事
配信元: Medical DOC

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