脳出血の代表的な症状
脳卒中の症状は、脳梗塞と脳出血で共通しており、特に以下の症状が「突然」発生した場合には、症状を落ち着かせたり、改善させたりするための自己処置は一切ありません。直ちに救急車を呼んで、救急病院を受診し、専門治療を受ける必要があります。
病院を受診する際は、救急隊員や医師に対して「症状がいつ、何時から始まったのか」をできる限り正確に伝えることが、治療方針(手術をするか、薬で治療するかなど)を決める上で非常に重要です。
片方の手足・顔の麻痺としびれ(片麻痺)
片麻痺(へんまひ)とは、体の左右どちらか片側の手足、あるいは顔の半分が、突然、自分の意志に反して動かなくなったり、急に力が抜ける症状のことです。
例えば、「食事中に持っていた箸を落とす」「急に立ち上がろうとして力が抜けて立てなくなる」といった形で、症状が発生した時刻を特定しやすいのが特徴です。顔の麻痺では、口の端(口角)が左右のどちらか一方だけ下がり、笑ったときに顔が歪んで見えることがあります。同時に、麻痺したのと同じ側の体に、感覚が鈍くなったり、しびれが生じたりする感覚の異常を伴うこともあります。
呂律不全・言葉の障害(失語・構音障害)
突然、呂律(ろれつ)が回らなくなる(構音障害)、または言葉が出なくなったり、相手の言葉が理解できなくなったりする(失語症)といった言語機能の障害が現れます。
構音障害は、口や舌、喉の筋肉が麻痺したり、連携が取れなくなったりすることで、発音が不明瞭になる状態です。
一方、失語症は、言葉を司る脳の中枢(多くは左側の大脳)が、出血によって傷つけられることで起こります。
これらの症状は、脳出血による脳の広い範囲の損傷を示唆しており、特に言語を扱う部分(言語野)を含む半球(多くは左半球)にダメージがあることを意味します。そのため、麻痺と並んで、診断と治療方針を決めるうえで非常に重要な緊急サインとなります。
激しい頭痛と意識障害
脳出血は、多くの場合、上記に挙げた片麻痺や言語障害などの特定の症状(局所症状)と同時に、激しい頭痛を伴うことがあります。特に「これまでに経験したことのない」ような突然の激しい頭痛は、血の塊が大きくなり脳全体を圧迫したり、出血が髄膜(ずいまく:脳を包む膜)を刺激したりすることで生じます。
さらに、出血量が多かったり、脳幹など生命維持に重要な部位が圧迫されたりすると、意識障害が生じます。軽い場合は、「なんとなくぼんやりしている(傾眠)」という印象ですが、重症の場合は、強く呼びかけたり、つねったりしても、目を閉じたままで反応がない(昏睡:こんすい)状態となります。意識障害は、大量出血や、脳幹への圧迫が進行していることを意味しており、生命の危機が迫っている非常に危険なサインです。
脳出血の初期症状
脳出血は「前触れなく突然」発症するのが基本ですが、発症直後の軽い症状や、重症化する前のサインを見逃さずにすぐに対応することが、重い後遺症を防ぐカギとなります。
突然のふらつきやめまい(失調)
失調とは、手足の麻痺はないのに、急に足元がふらついて、まっすぐ立ったり歩いたりできなくなる状態です。これは小脳や脳幹からの出血が原因です。ぐるぐる回るような激しいめまいや、立っていられないほどの強い平衡感覚の異常を伴うことがあります。小脳や脳幹は生命維持に不可欠な部位に非常に近いため、たとえ症状がふらつきやめまいという一見軽いものであっても、その部位の出血は急速に悪化しやすく、非常に危険なサインとなります。
急な視覚の異常
突然に片眼の視力が落ちたり、見えている範囲の一部が見えなくなったりする(視野欠損)、あるいは、物が二重に見える(複視:ふくし)といった症状が現れることがあります。これらは、視覚の中枢(後頭葉)や眼球の動きに関わる脳幹付近に出血がある場合に生じます。急な視覚異常は、眼の病気と勘違いされやすいですが、もし麻痺や頭痛、ふらつきといった他の神経症状を伴っている場合は、脳出血や脳梗塞の可能性をまず疑うべきです。
軽度で一過性の局所症状(微候)
手足の麻痺や呂律不全などの特定の症状が、非常に軽度で、数分から数十分で完全に消えてしまうことがあります。これは、一時的に血圧が不安定になったことによる軽い症状であったり、一過性脳虚血発作(TIA)といって、一時的に脳の血流が悪くなった発作であった可能性があります。出血による症状が完全に消えることは多くありませんが、血の塊が小さい場合に一時的に症状が改善したように見えることもあります。
症状が完全に消えたとしても、これは「症状が落ち着いた」のではありません。数時間後に本格的な脳出血や脳梗塞に移行する「重大な警告」である可能性が極めて高いため、専門医の診察を受けることが重要です。「回復したから大丈夫」と自己判断で済まさないようにしてください。「いつ、どのような症状が起きたか」を詳しく医師に説明し、CTやMRIなどの画像検査を受けるようにしましょう。

