
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『キングオブコント2025』(TBS)をチョイス。
■今さらキングオブコント2025のレビュー
すみません、やっと見ました。ひと通り盛り上がりも落ち着いたタイミングだと思いますが、今さら全コントのレビューをしたいと思います。私はお笑いについてズブの素人であり、ここで宣うのはすべてうわごとであると、それくらいの気持ちで読んでいただけたら幸いです。では、出番順にいきましょう。
【ロングコートダディ】
去年の花屋のコントもそうだったが、人間(今回は地底人)の普遍的なイヤさを主軸にした物語において、ロングコートダディは水を得た魚のようである。兎の演技力と、堂前の“いなし芸”とでもいうような振る舞いは常に唯一のものであり、『「いや」から入る人』というクリシェになりつつあるようなモデルへ息吹を与える。単に面白さにおいて別格であるという話。
【や団】
私はキングオブコントでのや団しか知らないのだけど、シチュエーションの作り方や、文字通りの「見せ場」(2023での灰皿は本当に感動した)が常に映画的だ。今回も、残り一つの餃子に客が二人、という興味を惹かれるシチュエーションに加えて綿密な物語があり、さらに笑えるという豪華版。床に落ちたラーメンを食べるのは引いてしまう、とは言われていたが、あれがや団のコントにおける「見せ場」なのだから仕方がないだろう。ぜひ銀幕スターのような風貌のロングサイズ伊藤を主演に、映画の脚本でも書いてみてほしいと思う。
【ファイヤーサンダー】
特別ヘンなことをするわけではなく、人間のごく普遍的な一挙手一投足を本人の属性によって面白く見せるというスマートなコントだが、確かにスイッチのワードが強烈すぎる。ブラック、というよりはニンニク。あれは誰でもギョッとしてしまう言葉なのだ。そんな大喜利的発想のシチュエーションにおいて、ファイヤーサンダーは常に最大出力。実際、今大会で一番笑ったのはこのコント。こういうの、めちゃ好き!
【青色1号】
押し引きが上手いというか、上にも下にも振れることなく、最大公約数のボケを積み上げるクールなコント。東京03的な物語だが、「石井さん…?」の天丼で勝負を懸ける落ち着きが独特。ラスト、「本当は今の話全部知ってたんだよね」という告白は皆までいうなと思ってしまったが、なぜか飲みかけのジュースを手渡して去っていく異常さが際立って、むしろ良かったかもしれない。何なの、アイツ?
【レインボー】
去年のM-1のときに書いた(https://thetv.jp/news/detail/1236030/)「エモーショナルの傾向」がハッキリと見てとれるコントだ。ただハッピーエンドへ突き進む無邪気さを、個人的にはあまり受け入れられない。相手のことを「女芸人」と記号的に呼び続けるのが、コントとお笑いを繋ぎとめる唯一のタイトロープな気がしているが、それ以外はエモーショナル全振りであることを考えると、むしろ浮いてしまって単なる嫌味に聞こえてしまわないか。属性ではなく、個人に踏み込まなければ帳尻が合わないコントだと思うのだ。恋愛なのだから。
【元祖いちごちゃん】
こっちがソワソワしてしまうような無音の連続。常に緊張感が張り詰めていて、そういうプログレを聴いているみたい。見ている間、身体の力が抜けなかったのは新しい体験で、それとは裏腹に、不条理に安心した部分もある。音楽やスローモーションを使って全力で道理を通すよりは、やっぱりこうした、何が起こるか分からないコントを見たい。冒頭、著作権の問題か、呼び込み君のメロディがちょっと違っていて、なんだか気味が悪くてよかった。
【うるとらブギーズ】
どちらにも悪気はなく、ただ不条理な言葉だけが浮遊し続ける。言い間違え続けるという、何にでも適用できるスタイルながら、ま〜面白い。ひたすら笑い続けていた。言い間違え続ける中で、ひとつの物語があればそれも面白いだろうし、すべてを停滞させて言い間違え続けるからこそ面白い、というのもあるだろうし、最後はウケるかどうかの結果論であって、そういった取捨選択がジャンケンのようにピッタリハマった人が勝つんだろうなあ、なんて、ぼんやり考えた。
【しずる】
私には難しいコントだ。ネタそのものというより、「こういうことをやっている」というメタ的な視点で笑うコントのように思う。なので、コントの「システム」が序盤で分かってしまってからは、こちらもどういった面持ちでいればいいか分からなかった、というのが正直なところ。耳打ちでの会話をやめてしまったら、単にラブファントムをBGMにしたヤクザ劇である。
【トム・ブラウン】
ぶれないトム・ブラウン。漫才と同じノリではあるが、コントということで、視覚的な驚きが追加されている。犬の着ぐるみを逆に被り、頭でおでき役をやるという狂気の発想。声もデカいし、展開も多くて胃もたれ必至。トム・ブラウンほど感想を書くのが難しいお笑いコンビはいない。ひたすら一貫している彼らを、支持するか、しないか、そのどちらかである。
【ベルナルド】
カメラと人間のミノタウロスという突飛な設定ながら王道に笑えるコントという印象で、私としては結構気に入ったのだけど、トム・ブラウンの直後だと、変にマイルドに映ってしまったか。たとえば秋山竜次の「カメラの造形がもっと面白ければ」という評も、ついさっきトム・ブラウンを見たからこそ出たものではないか、なんて思う。手堅さを競う勝負ではないとはいえ、ここまでしっかり作ってあって最下位ってことはないでしょう。今となっては分からないけども、順番が違えばどうなっていたか気になるところだ。
さて、ロングコートダディ、や団、レインボーが残ってのファイナルステージ。誰が優勝するのか、ドキドキ、ハラハラ……。
■ファイナルステージのレビュー
【レインボー】
ファーストステージとは打って変わって悪意のぶつかり合い、駆け引き自体の面白さで見られるし、要所要所の細かいワードも笑える。審査員からは評判の良くなかった音楽の使い方も、私は好きだ。客を乗せようという素直さがレインボーの強みなのだろうし、ジャンボたかおの表情筋を最大限に活かす良い演出だったように思う。余談だが、ファイヤーサンダーに引き続き、本日2度目の「荻窪」という言葉が出てくる。登場させる地名としてちょうどいいという感覚、正直、よく分かります。
【や団】
わりあい言葉が主体となるコント。めちゃ面白かったのだけど、や団に期待するコントとしては、少しだけ物足りなさが残る。とはいえ言葉の使い方が丁寧で、罵倒に飽きることがないのはさすが。後半のサイコスリラー劇を、あと10分は見ていたい。入口のカギを締めるシーンとかあると完璧。やっぱりや団は映画になる。「ジャパン」のイントネーションで読むのが正しいというのは初めて知った。
【ロングコートダディ】
人間あるあるはそのままに、イヤさを積み重ねていくのではなく、賛歌を匂わせたうえで突き落とす、見た目は違えど精神は何も変わっていないコント。警察官が泣いていると面白い、というような素朴な価値観を武器にできるのはやっぱり強い。泣いていると面白いし、銃を持っていてもなんら不自然ではない、という稀有な存在。警察官のコントは、これからも作られ続けるだろう。ラストの拳銃を祝砲に、ロングコートダディの優勝が決定。おめでとうございます!
というわけで、全コントのレビューでした。思ったより時間がかかってしまったうえ、「自分なんかが偉そうに……」とビクビクしながら書く羽目にはなってしまったが、楽しかったのでまたやりたい。ではまた、次回の何かしらの賞レースにて!ちなみに、個人的ベストはや団です。
■文/城戸

