ママが知っておくべき、男のコの【おちんちん】の話 vol.4
「ねえママ、“好き”ってどういうこと?」テレビの恋愛ドラマを見ていたときの、なんでもない一言だった。けれどその声が、思いがけず胸の奥をざわつかせる。——まだ早い、そう思うのは親のほうかもしれない。
子どもに「性」をどう伝えるか。昔の親たちは、その問いに沈黙で応えた。けれど、時代はもう違う。スマホを開けば、子どもたちは世界中の情報に触れ、まだ言葉を知らぬうちから“何か”を感じとっている。そんな時代に生きるママたちへ ——「性教育はまだ早い」と思う気持ちは、少し横に置いてみよう。「ゆるっと」でいい。完璧じゃなくていい。
「早すぎるは、もう古い」。そう語るのは、泌尿器科医でありベビー&保湿クリーム『キレイにむけたね』(販売元・秀和製薬)も展開する平山和秀先生。今回は、そんな平山先生と一緒に考える、今日から始める、“やさしい性教育”のはじめ方、あなたと子どもが、ちょっとだけ心を軽くして話せるヒントを探してみました。
「ねえママ、“おちんちん”ってなんであるの?」――戸惑いの先にあるもの
夜の台所で洗い物をしていると、ふと、リビングから息子の声がする。「ねえママ、“おちんちん”ってなんであるの?」その瞬間、手の中の皿が少し止まる。言葉を探す間に、蛇口の水音だけが静かに流れる。――そんな経験、誰にでもあるだろう。
平山和秀先生は言う。「親世代の多くは、自分が性教育を受けてこなかった。だから“どう話せばいいかわからない”という不安が生まれるんです。でも、“わからないからこそ、一緒に学ぼう”という姿勢が、すでに立派なスタートなんですよ」。たとえば、性教育という言葉を聞くと、多くの人は“避妊”とか“病気”とか、重いテーマを思い浮かべる。だが、本来の性教育はもっと根っこのところにある――“自分を大切にする”という生き方の話である。
「性教育とは、からだを知ること、命を知ること、そして『自分を大切に、他人を大切に』という価値を育むことです」と先生は語る。この言葉に象徴されるように、性教育とは決して“タブーを解除する”だけのものではない。むしろ親子で共有すべき、日常の問いのひとつなのである。
子どもが「これって何?」「どうして?」と投げかけるその瞬間は、まるで夜明け前の淡い光のように、静かに、しかし確実に、親子のあいだに橋を架ける。例えば、幼児期に「男の子ってどうしておちんちんがあるの?」と質問された母親が、つい言葉を探して黙ってしまう。その沈黙こそ、子どもにとって「これは話してはいけないこと」という暗示になりかねない。だが、その一歩を“早すぎる”と躊躇せず、むしろ「ゆるっと」始めることが、未来を拓くカギとなる。

