今日からできる、“ゆるっと性教育”3つのステップ
では、具体的に先生の“ゆるっとメソッド”を三段階にまとめてみよう。
1. 言葉を教えるフェーズ
まずはからだの部位の名称や、日常のからだの動きを“普通に言葉にする”ことから始める。「ここはおしり」「これはおちんちん(または○○ちゃんのここ)」という具合に、からだを自然なものとして扱う。この段階では、親の口が一番に“安心できる言葉のドア”となる。否定語を交えず、淡々と語ることが肝要だ。
2. 基本の“からだ・こころ・人”の話フェーズ
次いで、身体の変化や気持ちの動き、そして他人との関係性に少し触れていく。「からだは変わるもの」「感じる心があるもの」「それを他人と共有するにはルールがあるもの」といった、やさしくも大切な概念を“遊びながら”“問いながら”投げかける。先生はこの段階を「自然な会話の積み重ねが、子どもの安心と理解を育てる」と表現する。
3. 守る・問いかけるフェーズ
最後の段階として、親が「守る」という姿勢と、「問いかける」という姿勢を明確にする。例えば、「もしわからないことがあったら、いつでも一緒に考えようね」「痛いとか嫌だと感じたら、それは大事なサインだから言ってね」といったメッセージを、子どもの日常に折り込む。子どもが大きくなるにつれて、「からだ」や「性」「関係性」について自分なりの言葉で考えはじめるとき、親が“受け止める窓口”であることを予め示しておくことが、ゆるやかな性教育の要となる。
完璧じゃなくていい。“一緒に考える”が、最高のスタート
ここで、改めて先生の言葉を紹介したい。「性教育を早く始めるということは、子どもを“性的に煽る”ことでは決してありません。むしろ、子ども自身が持つ身体、感情、そして関係という領域を安心して扱う力を育てることなのです。この安心があれば、将来どんな問いがきても、子どもは『あ、聞いてもらえるんだ』と思い出せる。そしてそれが、自己肯定・他者尊重の土台になります」。この言葉が示すのは、「早めにゆるっと始める=安心の種を蒔く」ことである。
今日のお風呂タイム、明日の朝食のひととき――その場を“からだや変化について、気軽に話せる場”とみなしてみてほしい。決して深刻に構える必要はない。子どもの視線が、自分のからだを「知る」「気づく」「問いかける」方向へと向く、そのきっかけを、日常のゆるやかな流れに委ねるだけでよいのかもしれない。
最後に先生からのメッセージを。「性教育って、“正解を教えること”じゃありません。“話してくれた”という事実こそが子どもの心に残るんです。完璧じゃなくていい。一緒に考える、それだけで十分です」。お風呂あがりの湯気の中で、子どもがふと口にする小さな質問。その一言に驚かず、少し笑って、「いい質問だね」と返してみる。その瞬間、親子のあいだに流れる静かな光こそ、未来への性教育の始まりなのだ。
平山和秀/国立大学法人 熊本大学医学部卒業後、聖路加国際病院にて外科系初期研修医を経て京都大学附属病院泌尿器科に入局。泌尿器科専門医・指導医、がん治療認定医、ロボット手術ダヴィンチ免許を取得し、欧州泌尿器科学会、米国泌尿器科学会、世界泌尿器科学会に3年連続採択。アメリカで最も権威のある泌尿器科雑誌『UROLOGY』に論文出版する傍ら、形成外科医として美容医療に従事。『専門分野である男性器治療・性同一性障害・AGA(薄毛治療)の分野で安全で質の高い医療を提供したい』とカズ博多クリニックを開院。日本男性器学会理事長や日本初の男児向けデリケートゾーンケアクリーム『キレイにむけたね』を展開する秀和製薬代表取締役社長を兼務。
illust:YAECHIN

