糖尿病や高血圧、脂質異常症などの基礎疾患は、心筋梗塞の発症リスクを大幅に高める要因です。これらの疾患は動脈硬化の進行を加速させ、血管の健康を損なうため、適切な管理が欠かせません。基礎疾患を持つ方は、より積極的な予防策と継続的な治療管理により、心筋梗塞のリスクを軽減することができます。

監修医師:
滝村 英幸(医師)
2006年3月聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業
2006年4月聖マリアンナ医科大学病院初期臨床研修医
2008年4月済生会横浜市東部病院循環器内科
2016年12月総合東京病院循環器内科
2022年4月総合東京病院心臓血管センター循環器内科心臓血管インターベンション科科長
【資格】
日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医
基礎疾患が心筋梗塞リスクに与える影響
心筋梗塞の発症には、特定の基礎疾患や体質的要因が大きく関与します。これらの要因を持つ方は、より積極的な予防策と継続的な管理が必要です。
糖尿病と心筋梗塞の密接な関係
糖尿病は心筋梗塞の重要なリスクファクターの一つです。糖尿病患者さんの心筋梗塞発症リスクは、健康な方の2〜4倍高いとされています。高血糖状態が長期間続くことで、血管内皮が損傷を受け、動脈硬化が急速に進行するためです。
糖尿病による血管障害は、大血管と小血管の両方に影響を及ぼします。冠動脈のような大血管では、動脈硬化プラークの形成が促進され、プラークの破綻による血栓形成リスクも高まります。また、小血管障害により心筋の微小循環が悪化し、心筋の酸素供給能力が低下することも心筋梗塞のリスクを高める要因となります。
特に問題となるのは、糖尿病患者さんでは心筋梗塞の症状が典型的でない場合が多いことです。糖尿病性神経症により痛覚が鈍くなるため、無症状性心筋虚血や無痛性心筋梗塞が起こりやすく、発見が遅れることがあります。このため、糖尿病の方は症状がなくても定期的な心電図検査や心臓の精密検査を受けることが重要です。
高血圧・脂質異常症による動脈硬化の進行
高血圧は心筋梗塞の主要なリスクファクターであり、血圧の上昇により動脈硬化が加速されます。高血圧状態では、血管壁に持続的な圧力がかかることで血管内皮が損傷を受け、動脈硬化プラークの形成が促進されます。また、心臓の負担も増加し、心筋肥大や心機能の低下を引き起こす可能性があります。
脂質異常症、特にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の上昇は、動脈硬化の直接的な原因となります。LDLコレステロールが血管壁に沈着することで動脈硬化プラークが形成され、血管内腔の狭窄や閉塞を引き起こします。一方、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下は、血管壁からのコレステロール除去機能が低下することを意味し、動脈硬化の進行を促進します。
メタボリックシンドロームのように、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などの複数のリスクファクターが重複している場合、心筋梗塞のリスクは相乗的に高まります。これらの基礎疾患は相互に影響し合い、動脈硬化の進行を加速させるため、包括的な管理アプローチが必要です。
まとめ
心筋梗塞は生活習慣と密接に関連した疾患ですが、適切な知識と継続的な予防策により、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。症状の早期認識、危険因子の把握、生活習慣の改善を通じて、一人ひとりが自身の健康を守ることができます。
定期的な健康チェックと医療機関との連携により、心筋梗塞の予防と早期発見に努めることが、充実した人生を送るための重要な基盤となるでしょう。
参考文献
厚生労働省令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 厚生労働省:循環器疾患について 日本循環器学会:急性冠症候群ガイドライン国立循環器病研究センター:心筋梗塞とは
国立循環器病研究センター:糖尿病
日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン

