妊娠は順調に進み、夫婦で出産準備を進める彩花。母からは祝いの提案があったが、義父は「自分たちで買え」と一蹴。期待が裏切られ、彩花の胸に静かな憤りが募っていく。
母の支えと義父の不器用さ
あの日の夕食以降も、もちろん義父からの出産祝いの話はありません。むしろ「準備は進んでるのか?」など、あくまで出産に関することは私たち夫婦に全部任せて、煽るだけ煽る様子でした。
妊娠後期になり産休に入ると、実家が義両親の家と近いこともあり、度々母が様子や世話を見にやってきました。一応、義母にも色々支援してもらってはいたものの、やはり気心知れた母の方が頼りやすく、気を張らずに済みました。
「予定日までもう少しね。元気に産まれてくるといいわね」
母は私のお腹をさすりながら、赤ちゃんに語りかけるように優しい表情と口調でそう言いました。嫁いでからというもの、義父の粗暴な態度に意識が向きがちでしたが、私やお腹の子を優しく愛してくれる夫や両親の存在を、この時は噛み締めました。
休みを挟みつつ進めていた家事がひと段落すると、私は母と二人でお茶をしながら結婚生活の話をする流れになりました。ただやはり、顔合わせや結婚式での義父の態度が忘れられないのか、母はしきりに義父に何かされていないかばかり聞いてきました。
「こっちのお義父さんはどうなの?意地悪とかされてない?」
「意地悪はされてないよ。ただ、まぁ……頑固で不器用な人だよね」
私は笑いながら話しましたが、ただ現に、義父に抱く印象はまさしくそれでした。大酒飲みで意地っ張りな印象こそ強いものの、孫の誕生は誰にも負けないくらい楽しみにしているようには思えるのです。
ある日の夕飯、日に日に大きくなる私のお腹を見ては「楽しみだなぁ」と義父はしみじみ口にして、笑みを浮かべました。そんな義父の姿を見てからは「あぁ、不器用な人なんだな……」と思うようになったのです。
祝いの言葉をめぐる落差
「それで、こっちのご両親からも、出産祝いは準備してもらえるんでしょ?」
「やっぱり聞かれるよね……」と思いながらも、私は白状しました。
「いや、特にはないみたい。同居してるんだから住む場所を確保してもらってるし、きっと赤ちゃんのお世話も少しは一緒にしてもらえると思うし?……」
気まずさを感じつつ上手に話をまとめようとしましたが、母の顔はあっという間に険しく真っ赤に紅潮していきました。

