「インド料理をバンドに例えると香りはボーカル」 「ビリヤニ大澤」オーナーシェフ・大澤孝将さんが教える“ビリヤニ”がおいしくなるポイント

「インド料理をバンドに例えると香りはボーカル」 「ビリヤニ大澤」オーナーシェフ・大澤孝将さんが教える“ビリヤニ”がおいしくなるポイント

ビリヤニには「コーラ」がとても合う!


小竹:きのこのビリヤニが完成しました!


小竹:早速いただきます。きのこのうま味があっておいしいです!

大澤:うま味がやばいですね。手で食べるのもいいでしょう。触った瞬間おいしいじゃないですか。きのこの弾力と米のふわふわとスパイスのまとわりが絶品ですね。

小竹:お店ではコーラを出していると聞きました。

大澤:今日はまだ早いですね。お店でも“焦らしコーラ”と言っています(笑)。焦らすことによっておいしさが高まるんです。


小竹:ビールではなくてコーラなのですね。

大澤:お酒でもいいと思うのですが、どんなにお酒好きな人でも、コーラにみんな感動しますね。現地がもともとコーラなんです。立ち食いのビリヤニ屋さんの隣にコーラ屋さんがあるし、飲食店でもメニューの一番上がコーラなんですよ。

小竹:キンキンに冷やしてあるのですか?

大澤:マイナス3度です。この前、デリーの労働者エリアの立ち食いビリヤニ屋さんに行ったのですが、デリーのビリヤニは脂っこくてスパイス強くてしょっぱい。野菜のない二郎系ビリヤニみたいな感じなんです。それを食べた後にキンキンのコーラを飲んだら、おいしすぎてぶっ飛びましたね。

これからもっとビリヤニは進化できる!


小竹:大澤さんのビリヤニは、味付けの秘密などがあるのですか?

大澤:長年、インド、パキスタン、バングラデッシュとその周辺国にビリヤニはあって、地域によっていろいろなスタイルのビリヤニが存在します。さらに、インドは多民族国家で公用語が18もあるので、インド人同士でもコミュニケーションが取れなくて、ビリヤリのレシピが断絶しているんです。

小竹:うんうん。

大澤:街によってエリアによって、なんなら家によって、ビリヤニのレシピは全く違う。そういうものをずっと食べて学び、ビリヤニがおいしくなるための必須条件を長年研究してきて、結論が出ました。「香り」と「うま味」です。

小竹:やはりその2つ。

大澤:あと、絶対条件として、「お米がおいしく炊けている」こと。お米がおいしく炊けていなかったら料理として成立しない。影の立役者ではありますが、ビリヤニにおいて一番重要なのはお米がおいしいこと。その上で、香りとうま味があればビリヤニになるし、香りとうま味が足りないとビリヤニにならない。レシピの組み立ての部分は、香りとうま味の出る食材を持ってくれば、どのようなものでもビリヤニにできると考えます。

小竹:香りが立ちすぎても良くないということはない?

大澤:今年、僕が一番おいしいと感じたビリヤニは、春の山菜のコシアブラのビリヤニです。香りが出る食材をビリヤニにするとなぜおいしくなるかというと、お米は香りを広げるためのキャンパスなんです。コシアブラの香り成分は油に溶ける性質があるので、油で炒めると油にコシアブラの香りを伝えられるんです。それでビリヤニを炊くことによって、お米全体にコシアブラの香りを広げる。

小竹:あと、ちょっと苦味もあったりしますね。

大澤:それもお米にとってプラスです。苦味があるものはすごくお米がすすみますからね。バスマティライスは日本米よりも表面積が圧倒的に大きいので、香りを発散させられる。だから、香りがある食材はビリヤリにすることによって、香りの出方が爆発的に強くなっておいしくなる。逆に言うと香りが良くない食材はビリヤニには向いていないと思います。

小竹:インドのものよりも大澤さんの作るビリヤニのほうがおいしいですよね。

大澤:僕はただのビリヤニ好きなので、インドのビリヤニも全て最高においしいし、自分が作るビリヤニも最高においしい。ありとあらゆるビリヤニを愛していますし、ビリヤニの可能性はまだまだ広がっている。ただ、インド料理はそもそも保守的なので、新しい食材や新しい調理法にあまりチャレンジしない。

小竹:うんうん。

大澤:今の調理法も宮廷料理の時代に出来上がったものが一般的なので、これからもっとビリヤニは進化できる。どのようなもので進化するかというと、うま味があるもの、香りがあるもの、あと、私がレシピを考えるときに感じることなのですが、本当においしいビリヤニであれば、日本人が食べてもインド人が食べてもおいしいんです。

小竹:そうですね。

大澤:ただ、ずっと調査をしていて、味の好みの傾向は感じ取れる部分はあります。誰しも見たことがない食べ物には抵抗を示すし、自分が慣れ親しんでいる味のほうが好きという文化的な前提はもちろんあります。

小竹:はいはい。

大澤:そのフィルターを取り除いたときに、どのような傾向があるかというと、インド料理をバンドに例えると、香りはボーカル。ボーカルが一番印象を作り出すし主役です。でも、日本人にとって一番重要なのはうま味なんです。日本においては、香りがあってもうま味がないものはあまり好まれない。香りは弱いけどうま味がすごく強いもののほうが好まれる。うま味や香りが優位で、そこに香りが補う形が日本人の好みの傾向です。

小竹:大澤さんとビリヤニの関係性は10年後はどうなっていると思いますか?

大澤:僕はビリヤニを作って作って作りまくりたい。いろいろなシチュエーションで作りたい。今は銀座のお寿司みたいなスタイルで、ビリヤニの最高値を研究するという方針でやっていますが、本当は激安大衆ビリヤニも作りたいんです。コンビニ商品の監修もやりたいし、もうピンからキリまでビリヤニを作りたいです。

小竹:大澤さんにとって“おいしい”とは?

大澤:おいしいとは“幸せ”です。ビリヤニはすごくおいしい。しかも、たくさん作れるので、ほかの人とシェアすることになって、ビリヤニを作ると複数人がおいしいと感じられる。それは、この世に幸せを生み出している行為だと感じますね。だからこそ、コーラを我慢することも必要ですね(笑)。

(TEXT:山田周平)

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【ゲスト】

第46回・第47回(10月3日・10日配信) 大澤孝将さん


「ビリヤニ大澤」オーナーシェフ/1989年長野県生まれ。大学生のとき、インドで出会ったビリヤニに衝撃を受ける。そこからビリヤニの研究を始め、間借りビリヤニ屋のオープン、ビリヤニシェアハウスの立ち上げ、インド料理店での勤務など様々な角度からビリヤニを追求する。コロナ禍をきっかけに自分を見つけ直し、ビリヤニ専門店『ビリヤニ大澤』を2021年8月にオープンした。ビリヤニ調理を科学的に分析し、究極のビリヤニを目指している。著書に『「ビリヤニ大澤」のフライパンビリヤニ』(主婦と生活社)

ビリヤニ大澤公式HP

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【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子


クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家。
趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。

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